美容クリニックの開業について|費用や年収・失敗しないポイントを紹介
日本において美容医療の需要は年々高まっています。自身が培ってきた美容医療のスキルを、提供したいといった想いから、美容クリニック開業を目指す医師の方も多いのではないでしょうか。美容クリニックの医師の求人を見ると、他の診療科と比較しても、かなり高額な年収。開業医になれば、それを超える年収を実現できることも予測されます。そのためには、開業時より「経営」を意識することが大切です。この記事では、開業費用や開業までの流れ、失敗しないためのポイント、業務の効率化に適した電子カルテについて解説しています。
記事の最後には、美容クリニック向けのクラウド型電子カルテをご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
美容クリニックの特徴
美容クリニックは美容を目的とした医療行為が提供され、ほとんどの場合、自由診療のみを扱っています。
美容クリニックとして経営を継続するためには、常に最新の美容医療を提供できる必要があり、高額な最新の医療機器や、医薬品を取り入れなければなりません。
保険診療の医療機関と比較すると、サービス業の色が濃いので、患者さんへの徹底したサービスが必要です。医療技術やケアだけでなく、内装やアメニティーの充実も求められるでしょう。
美容クリニックの開業費用は?
美容クリニックを開業する場合、開業資金が他の診療科に比べて高額です。
以下に、いくつかの診療科の開業費用の例を示しています。
内科:5,000万~8,000万円
皮膚科:4,000万~6,000万円
心療内科・精神科:1,500万~2,500万円
美容クリニック:5,000万円~1億円
特に費用がかかるのが美容医療機器です。レーザー各種、皮膚診断システム、イオン導入機器などを導入すると、開業時の医療機器の金額だけでも、3,500万円を超える場合もあります。
美容クリニックは、最新の美容医療を提供することが求められるため、医療機器への投資の割合が多くなるのです。
美容クリニック開業の流れ
美容クリニックを開業する時の流れは、おおよそ決まっています。
開業前に流れを把握しておくことによって、何から着手していけばいいか分かりやすくなりますので、事前に確認しておきましょう。
また、こちらでも開業の流れについて紹介していますので、参考にしてください。
参考記事:自由診療クリニックの開業について|手続きや資金について解説
経営理念とコンセプトを明確にする
美容医療市場は、2014年は2,833億円、2017年は3,252億円、2019年は4,070億円と年々市場規模が増加していることがわかっています。
参考:美容医療市場に関する調査を実施(2019年) | ニュース・トピックス | 市場調査とマーケティングの矢野経済研究所
美容のニーズの高まりがあるとともに、競合クリニックの多さも推察されるでしょう。
患者さんに選んでもらえるクリニックにするためには、まず「経営理念とコンセプト構築」の明確化が最優先課題と言っても過言ではありません。
美容クリニックが患者さんに選ばれる理由は、患者さんの美容目的のニーズが満たされるのはもちろん、立地や内装、最新の医療機器が導入されているか、最新の技術が提供されているかという要素が大切でしょう。
開業予定地を決める
病院を開業する場合は、「競合他院が少ない」「ターゲットとなる方が多い」場所を選ぶことは、経営上重要でしょう。
しかし、美容クリニックに限っては、都心部が特に需要が高く、郊外では数が少ないのが実情です。
実際に、2021年の調査では、美容皮膚科や脱毛クリニックの首都圏での開院が増加し、都心での需要の高まりとともに、競合が増えています。
参考:美容医療市場に関する調査を実施(2021年) | ニュース・トピックス | 市場調査とマーケティングの矢野経済研究所
エリアマーケティングをしっかりと行い、競合が集まる中でも、自院の特色が光るような場所での開業が望ましいでしょう。
事業計画を立てる
クリニックの開業は起業であり、事業を開始するという事です。
事業を成功に導くための事業計画書作成が必須。
この時点から、コンサルタントに依頼をすることもありますが、経営者である医師自身がしっかりと把握しておくことが、資金調達や今後の運営のために大切な心構えと言えるでしょう。
事業計画のポイントは、
- 経営理念の明確化
- 開業戦略の方向性
- 院長の強み
- 設備投資額の見積もり
- 開業前の家賃、人件費、広告費用などの費用見積もり
- 資金調達方法
- 収入見積もり
- 支出見積もり
これらを具体的かつ明確にして計画書を作成します。金融機関からの資金調達時のプレゼンテーションにも重要な役割を果たすことになるでしょう。
資金調達をする
開業を全額自己資金で賄うケースはまれです。多くの場合、資金調達のためには、融資を受けなければなりません。
クリニック開業で一般的に利用されるのは次の4つ。
- 日本政策金融公庫
- 制度融資、医師信用組合
- 福祉医療機構
- 銀行などの民間金融機関
上記のうち「福祉医療機構」は、診療所や介護老人保健施設などが融資対象となります。このため、美容クリニック開業とは条件がフィットしないと考えてよいでしょう。
民間金融機関では、クリニックに特化した金融ローンも展開されています。融通は利きやすいですが、審査のハードルは他と比べて高いと言えます。
このほかにも、医療機器のリース会社が融資を行っている場合も。ただし、リース会社が銀行から借入した資金を貸し付けるため、金利が高くなるという点はデメリットです。
開業資金については、こちらで詳しく解説していますので、併せて確認してください。
参考記事:25.美容クリニック 開業 資格
各種手続きをする
開業における手続きは、書類提出後、受理されるまでに時間を要することもあります。開業予定日から逆算し、計画的に手続きを進める必要があります。
代表的な手続きとしては以下のようなものがあります。
- 保健所への「開業届」など
- 税務署への「個人事業開廃業など届出書」など
- 労働基準監督署への「労働保険 保険関係成立届」など
このほかにも、スタッフを雇用する場合は社会保険事務局で手続きが必要です。
美容クリニックは自由診療がほとんどですが、もし保険適用の医療も取り扱う場合には、地方厚生局へ「保険医療機関指定申請書」の提出が必要になります。
また、各種届出や申請の書類は各提出先や担当先に、事前に必ず相談するのがおすすめです。
提出する書類が一発で受理されることがほとんどないからです。
ここで紹介した他にも、多くの手続きが必要ですので、漏れを防ぐために、綿密なスケジュールを立てて、手続きをしていかなければなりません。
ターゲットに合わせて内装を決める
美容クリニックは、美容を目的とした医療を提供するため、意識の高い女性がターゲットになることが多いでしょう。近年では、男性の顧客も多くなっています。
性別や年齢にかかわらず、自由診療で100%の費用を支払うわけですから、医療だけでなくクリニックの清潔感や高級感、その他のサービスへの期待が高いです。実際にSNSなどの口コミでも、病院の内容や居心地の良さを評価する内容はよく見られます。
また、施術前後ではメイクを落としたり洗顔したりすることもあるので、パウダールームを広めに確保し、メイク落としや洗顔剤などのアメニティーを充実させるとよいでしょう。
医療機器・人材を準備する
美容クリニックでは、最新の美容医療の提供が求められます。そして、最新の医療機器の多くは海外の製品ですので、日本では未承認の美容用医療機器を、海外から個人輸入する必要があります。個人輸入をする際には、申請のための書類を各種準備し、厚生局への提出が必要です。手続きに時間を要しますし、海外からの輸入なので、手元に届くまでには時間を要することが予測されます。事前にスケジュールを確認して手続きを進める必要があるでしょう。
また、最近は厚生労働省の薬事承認を得られやすくなったため、レーザー系の治療機器は日本承認のものが増えてきています。医療機器は基本的に医療機関のみ購入することができますので、日本承認の医療機器を導入することで、サロンなどの競合との差別化も図りやすくなります。
人材については、受付、カウンセラー、看護師の採用が必要です。
美容クリニックは医療提供が基本でありながら、サービスの質も強化していく必要があります。美容クリニックの経営に必要な意識を持ち合わせていることも確認しながら、採用を進めていきましょう。
美容クリニックの平均年収
美容クリニックの勤務医や開業医の平均年収については、厚生労働省などのデータは見当たりません。
ただし、美容クリニックの勤務医の求人情報を見てみると、年収1,500万~3,000万円程度のようです。経験がある医師や、院長クラスであれば3,000万~5,000万円を超えるような求人も。このような点から、美容クリニックの開業医はさらに高額な年収であることが予測されます。
ただし、美容クリニックは医療機器など開業資金や運営資金も高額になりがちです。安定した年収を実現するためには、経営状態を良好に保つ必要があります。
美容クリニック開業で失敗しないポイント
美容クリニックを開業するには、美容医療の専門知識、技術力の高さは必須条件です。開業となると、医師としてのスキルだけではなく、経営力も求められます。
勤務医時代にはあまり意識する必要がなかった、法律、財務に関する知識や、手続きをスムーズに行うための行動力が必要です。特に勤務医時代にはほとんど行わない、資金調達や各種手続きに必要な事務作業は、開業にあたって重要なタスク。必要な時、コンサルタントを受けながら、スムーズな運営を行いましょう。
また、開業前を含め、効果的な集患戦略も経営成功のためには必要です。
他院との差別化を図る
美容クリニックは、他の診療科とは異なり、そのニーズは都心部に集中しがちです。競合が多い都市部に開業する場合には、エリアマーケティングが重要です。エリアにある競合の特色を分析することから始めます。
競合を避けて地方で開業する場合でも、美容クリニックの他にエステサロンや皮膚科などの競合との差別化ができていれば、集客することは難しくないでしょう。
どのエリアで開業するにしても、執刀医の経験が豊富な施術や、近隣の競合にはない施術を取り入れるなど、他院との差別化を図りましょう。
資金調達は計画的に
美容クリニックは、他の診療科に比べ開業時の初期費用が高額になりがちです。これは前述したように、最新の美容医療機器が必要になるためです。加えて、都市部に開業する場合には、テナントの敷金礼金、家賃なども高めに設定する必要があるでしょう。
また、美容クリニックの場合は集患のための宣伝も重要です。公式サイトやSNSなどの構築や運営にも、一定の費用をかける必要があります。
資金調達の際には、こういった経費を漏れなく算出し、資金調達に必要な、見積書などの必要書類は計画的に準備しなければなりません。
集患のための施策も重要
医療でありながらサービス業の色が濃い美容医療業界。開業に適したエリアも都心部に集中しがちなので、集患のための施策は経営成功のために不可欠です。
現在はインターネットが普及し、患者さん自らがWEBサイトやSNSを活用して、積極的な情報収集を行う傾向があります。
SNSにはそれぞれ特徴があります。画像を有効に使えるもの、クーポンの配布や予約機能を利用できるもの。それぞれのSNSの特徴を生かせば、より効果的です。ターゲットに有益な情報を適切に配信し、集患に繋げていきましょう。
効率化ツールは開業時に導入しておくと良い
美容クリニック開業に伴って、業務の効率化につながるツールは、開業当初から導入しておくことがおすすめです。代表的なものの1つに電子カルテがあります。
コストを抑えるため、開業当初には紙カルテを選択するクリニックもあるようです。しかし、紙カルテは低コストであるものの、同時の閲覧記録ができない、保管場所の確保などデメリットがあります。
開業後、途中から電子カルテに変更すると、移行には手間や時間がかかり、スタッフへのレクチャーや慣れるまでの時間を考えると非効率的です。
当初から電子カルテを導入すれば、カルテ管理も容易で、業務の効率化を図れます。
また、予約機能との連携できるものもあるので、受付スタッフの業務は効率化するでしょう。
立地や物件選びも大切
需要の多い都心部で開業するパターンが多い美容クリニック。患者さんにとってメリットの多い立地や、「あの病院に行きたい」と思わせるような魅力を感じさせる物件選びが大切です。
都心部と言っても、それぞれのエリアや街で特色があります。ビジネス街、商業施設が多い、年齢層に特徴があるなど。働く女性がターゲットになるのであれば、駅やターミナル駅に近い物件を選ぶのが望ましいでしょう。
ファッションなど美への意識が高い街であれば、外観もきれいなビルである方が好印象です。自院のターゲットとなる方々にとって、魅力的な立地、物件選びを行いましょう。
プライバシーを大切にした内装も重要
美容クリニックが患者さんから選ばれる理由は、保険診療の病院のように「近いから」「子どものころから利用しているから」といった要素はあまりないでしょう。
患者さんはニーズをより満たしてくれる病院を求めています。自由診療の自費100%を支払うわけですから、なおさらその思いは強いでしょう。
多くの患者さんに選ばれるためには、他院とは違う強み、そして内装など医療以外のサービスの良さなどを意識する必要があります。
特に美容クリニックでは、プライバシーに配慮した内装も必要です。他の患者さんと対面せずに済むような、レイアウトの工夫をするとよいでしょう。
美容クリニックの開業は電子カルテの選定も大切
美容クリニックが扱う医療のほとんどは、自由診療です。このため、電子カルテも自由診療に対応したシステムを導入することが望ましいでしょう。
規模が比較的小さいクリニックであれば、初期費用を抑えられるシステムを選ぶことも大切です。さらに、美容医療では、施術前の状態と、施術後の改善の状態の経過を記録するために、画像を保存することも重要です。
自由診療に特化しており、初期費用を抑えながら、診療や業務に効果的に使用できる電子カルテのシステムを選定することは大切です。
ビフォーアフターの画像の管理ができるものを選ぶ
美容医療の施術においては、施術のビフォーアフターの評価は重要です。客観的な評価をするためには、写真で画像に残すことも有効です。
この場合、多くの写真を撮ることになるため、電子カルテ内で画像の管理ができるものを選ぶと良いでしょう。特に美容整形の手術においては、手術前、手術直後、ダウンタイム後の経過を記録することは、施術後の経過観察をしていたという証拠にもなります。リスク管理の面からも画像の保存は重要です。
他にも、シミやニキビ、シワなどに対するレーザーや光治療の施術は、1回で完了するものもあれば、複数回の施術が必要になるものもあります。経過を画像で記録し、効果を可視化することで、患者さんも効果をより実感できるでしょう。
クリニックによっては、モニターを募集し、WEBサイトに施術のビフォーアフターの写真を掲載することもあります。そういった場合にもビフォーアフターの画像の管理ができる電子カルテを選ぶことによって、スムーズに活用できるでしょう。
役務管理ができるものを選ぶ
美容クリニックでは、1回の施術ではなく、複数回に渡った施術を行うことも多いです。その際に、「このお客様(患者さん)はどのコースを選んだのか」「何回目の施術なのか」「使用期限はいつまでなのか」などの管理が必要になり、管理が乱雑になりやすいです。
いわゆる美容医療で期間が1ヶ月を超え、5万円を超える施術の場合には「特定継続的役務」として特定商取引法の対象となっています。
特定商取引法対象の施術をされる場合、契約、消化・解約等の、金額や回数が把握できる役務管理に対応した電子カルテの導入をおすすめします。
初期費用を抑えるならクラウド型電子カルテがおすすめ
電子カルテには主にオンプレミス型、クラウド型の2種類があります。
オンプレミス型はサーバーを院内に設置する必要があり、数百万単位の高額な費用が必要です。
一方、クラウド型の電子カルテは、インターネットを介してクラウドにデータを保存します。サーバーや専用機器の設置が必要ないため、初期費用を数万円程度に抑えることが可能です。
サーバーの保守・監視の費用も必要ないので、月額料金も数万円程度です。
さらに、予約管理システムなどのオンラインサービスとの連携をしやすく、業務を効率化できます。
美容クリニック開業時の電子カルテなら「MEDIBASE」
MEDIBASEは、自由診療に特化したクラウド型の電子カルテです。
初期費用はオプションの数にもよりますが、高くても数万円前後。オプションを吟味すれば、さらにコストは抑えることも可能です。月額は39,800円とサポート費用のみで使用人数は無制限と低コストです。
診療コース管理機能を搭載しているため、自院の治療に併せて自由に組み立てることができます。レーザー治療や光治療などのように、複数回のコース設定が行われる治療の役務管理も容易です。
文書・画像ファイリングシステムでは、写真などの画像データを、カルテ内に保存ができます。時系列で画像を2枚並べて表示することも可能で、前後の比較など患者さんへの説明も効果的でしょう。
このように、MEDIBASEを導入することで、自由診療を取り扱う美容クリニックの診療や業務の質が上がり、患者さんへのサービスの向上につながります。
美容クリニックの開業時、電子カルテを導入する際にはぜひご検討ください。