クリニックの経費削減の方法とは?節約できる項目について
クリニック経営を見直す際に、経費の無駄をできるだけ減らすことは重要なポイントです。この記事では、クリニックの経費削減の具体的な方法を解説しています。経費削減で成果を上げるためには、必要な経費とそうでない経費を区別し、節約できるコスト項目を明確化していきましょう。
近年、日本の医療機関の赤字傾向が続いており、新型コロナウイルスの感染拡大によってさらに赤字傾向が進んでいます。このような背景から、クリニックの経営状況に悩む担当者の方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、クリニックのコスト構造を踏まえながら、経費削減の方法や節約できるコスト項目について具体的に解説しています。
目次
クリニックの経営の現状
新型コロナウイルスの感染拡大により、引き続きクリニックなどの医療機関では厳しい経営状況が続いています。
厚生労働省による「医療施設動態調査」では、病床なしの個人開設のクリニックの医療収益は、以下の表の通りです。
売上金額(千円) |
|
令和元年度 |
88,212 |
令和2年度 |
82,148 |
金額の伸び率は-6.9%と、減少の傾向が見られます。
売上金額の減少の理由としては、新型コロナの感染を避けるため、多くの患者が受診を控えたことがあげられます。ワクチン接種や発熱外来を行うことで売上回復を目指しているクリニックも多いですが、新型コロナウイルス感染症関連の補助金を含んだ場合でも、損益差額率は縮小しています。コロナ前の水準に戻すためには、ニューノーマルに合わせた経営努力が必要になるでしょう。
参考:厚生労働省医療経済実態調査(医療機関等調査)
クリニックで経費削減するための具体的な手段
クリニックの経営を維持するためには、効果的な経費削減が必要です。
ただ単に経費削減に走るのでなく、利益・経営構造の現状を把握、分析したうえで取り掛かる必要があります。
このため、院長1人で行うのでなく、院内で担当者を決めてチームを作り、組織的に取り組んでいかなければなりません。
ここでは、経費削減するための具体的な手段について1つずつ解説していきます。
担当者を決めて、チームを作る
クリニックで経費削減を行う場合、院長1人で進めることは困難です。経費削減の担当者を決めて、チームを作る必要があります。
経費削減が計画的に進まない原因として、担当者の不在があげられます。担当者がいなければ、コスト削減の目的や目標、計画が立てられず、院内のスタッフの意識や行動が統一されません。
担当者が経費削減の業務に集中することで、計画・実行の責任の所在が明らかになります。目標や計画が具体化されると、スタッフも行動に移しやすくなるでしょう。
コスト削減の目的を明確にする
コスト削減を成功させるためには、現場で働いているスタッフの協力が不可欠です。そのためには、日々の業務の中でスタッフが意識し行動できるように、コスト削減の目的を明確に示すことが大切です。
目的がはっきりしなければスタッフの協力が得られず、効果的に取り組めない可能性があります。
クリニックの現在の経営実態、対策をしない場合に生じる問題やリスク、クリニック経営を成功させるために必要な改善策など、コスト削減に取り組むに至った経緯を整理し、スタッフと目的を共有しましょう。
現状の経費を確認し、無駄なコストを把握する
コスト削減といっても、安易に削減して良いわけではありません。本当に無駄なものが何か、削減余地がどこにあるのかを特定することが必要不可欠です。まずは、クリニックの現状の経費を細かく確認していきましょう。
支出データに関して、何を、どこから、なんのために購入しているのかといった、支出分析をします。そうすることで、多角的かつ客観的にコストの無駄を特定できます。客観的なデータは、スタッフにも現状や成果が見えやすいので、コスト削減の意識向上につながるでしょう。
目標設定を具体的にする
無駄なコストを把握し、削減の余地を特定できたら、どのくらいのコスト削減を目指すのか、目標設定を具体的にしていきます。
その際は、実際に行動する現場の状況を踏まえ、実行不可能な目標設定にならないように留意しましょう。
目標設定をする際には、「SMART」の原則に沿うと良いです。
- Specific:具体的で分かりやすい目標となっているか
- Measurable:数値等で測定ができる内容であるか
- Achievable:目標達成が可能な範囲であるか
- Relevant:現実的で成果を重視しているか
- Time-bound:期限が明確に設定されているか
この原則を活用することで、目標設定の精度を高めることができます。
コスト削減策を検討する
目標設定ができたら、コスト削減策を検討します。この時重要なのは、担当者側だけで決めてしまわないことです。スタッフの意見を聞きながらコスト削減を検討していくことで、効率の良い削減が実現できます。
まずは、担当者等チームの中心となるメンバーで、目標に沿ったコスト削減策の原案を作成し、現場のスタッフに説明しましょう。スタッフの意見を聞きながら、削減策の内容をすり合わせ、ブラッシュアップしていきます。
施策を実行する
スタッフとともに作り上げたコスト削減の施策を、決定した期限内に実行していきます。この時、現場のスタッフのチーム全員と協力しながら、状況や動向を定期的にモニタリングしていきます。改善・追加が必要であれば、その都度検討して修正をしていきます。
担当者が現場の声をしっかり聞くという姿勢が、スタッフとの信頼関係にもつながり、コスト削減をよりスムーズに進めていくことができるでしょう。
施策の評価をする
施策を作成した時点で評価基準を決め、施策の実行期限が終了したら、評価基準に従って評価を行います。スタッフの評価も回収しておきましょう。
評価については院長・経営責任者を交えます。取り組みによる成果を確認し、目標が達成できた点、できなかった点を明確にし、それぞれの理由を分析することが重要です。
分析結果から、改善点を次の経費削減の施策に繋げていくと良いでしょう。成功したポイントも、次の計画に反映すると効果的です。
クリニックにおけるかかるコストの種類・内訳
医療機関でかかるコストの種類は、以下のようなコストがかかります。
- 人件費
- 材料費
- 委託費
- 設備関係費
- その他の経費
人件費は、クリニックの中でも重要な人的リソースであるスタッフに関わるコストです。人件費には採用経費なども含みます。材料費は医薬品費や診察材料費(注射針、ガーゼ、包帯など)です。委託費はリネン、給食など外部の業者に委託しているサービスに必要な費用です。
設備関係費は設備の維持に必要な費用です。設備投資などの費用を一定期間に配分する会計処理の方法である、減価償却も含みます。
そして、これら以外の光熱費、事務業務に必要な消耗品、交通費などがその他の経費として必要です。
クリニックのコスト構造と特徴
2021年11月に公開された、第23回医療経済実態調査によると、クリニックのコスト構造は次のような結果になっています。
入院診療収益のあるなしに関わらず、医業・介護費用に占める人件費が、50%に近い結果となっています。。2020年は前年度よりも、人件費の割合が数パーセント増えています。これは新型コロナウイルス感染拡大による、スタッフの増員や超過勤務の増加が影響していると考えられます。
また、医薬品費の割合も多く、入院診療収益のあるなしに関わらず、10%前後を占めています。前年度からの大幅な変動はなく、コストの見直しなどが積極的に行われていない可能性もうかがえます。また設備費を含む、その他の医業・介護費用も20%前後と高い割合なので、コスト削減を検討すべき余地のある項目と言えるでしょう。
コスト削減に取り組むべき項目
優先的にコスト削減に取り組むべき項目は、人件費、医療材料費、設備管理費です。
これらは全体から見た割合が高いので、うまくコスト削減ができれば、大きな成果をもたらすでしょう。
クリニック経営に欠かせないスタッフの人件費については、慎重に検討しなければなりません。医療材料費や設備管理費は見直しが滞っている可能性があるため、改善の余地が大いにあると考えられます。
業務効率を上げて余分な人件費を削減する
人件費の削減は慎重に行う必要があります。安易に時給やボーナスを下げるなどの対応を行えば、スタッフのモチベーションの低下を招き離職につながりかねません。
まずは業務効率を上げて、残業費などを削減する視点を持つことが大切です。業務を非効率にしている原因を探り、余分な業務時間を減らしていきます。例えば紙カルテ、予約の電話対応などは、ツールを導入することで業務効率をあげ、残業時間を削減することができるでしょう。
これらのシステム導入には費用がかかりますが、効率性を格段にアップできるので、長期的にみるとコスト削減に繋がります。
医療材料費を改善する
クリニックで使用する医療材料の多くは、医師の裁量で決められていることがほとんどです。そのため、経費削減の担当者にとっては、見直しがしにくく、削減をするのが難しい項目と考えられます。
一方で、過剰在庫・使用期限切れの医薬品の廃棄による損失など、材料の価格以外の部分でも改善の余地が多いのも事実です。必要な適正在庫を把握し、発注の頻度を見直しましょう。また、期限切れや在庫切れが生じないようにルールを決めて、管理する必要があります。単価の適正化も重要です。長年同じ医療卸業者と取引をしていると、価格交渉をしないまま、相場よりも高額で購入していることがあるので注意が必要です。
設備管理費を削減する
設備管理費には、医療機器など各設備保守管理や、清掃費・警備費が含まれます。
医療機器には初期費用に加え、毎年の保守管理や修理費などのメンテナンス費用が必要です。これらの保守費用については、安易にフルメンテナンスの契約を結ばないようにしましょう。サービス内容を細かく見て、無駄を徹底的に省きます。損害保険などの別のサービスを使うほうがリーズナブルになることもあります。
また、清掃費・警備費はクリニックの広さや頻度によって費用が変わります。価格が適正かどうか面積・頻度と照らし合わせて確認しましょう。
クラウド型電子カルテで経費削減を
クリニックのコスト構造の中でも高い割合を占める人件費を削減するには、業務の効率化が鍵となります。
電子カルテは業務効率化の代表的なツールの1つで、導入には費用がかかるため、見送っているクリニックもあると思いますが、クラウド型の電子カルテなら、低コストでの導入・運用が可能です。
ここからは、クラウド型の電子カルテについて解説します。
オンプレミス型より経費を削減できる
電子カルテには、データ保存のためのサーバーを院内に設置する「オンプレミス型」と、クラウド業者のサーバーにインターネットを介してデータを保存する「クラウド型」があります。
オンプレミス型の場合は、サーバーやネットワークのシステム設置が必要なので、数百万単位の初期費用が必要です。保守点検やシステム更新にも、高額な費用がかかります。
しかしクラウド型は、サーバー設置は必要ないので初期費用は10万円程度に抑えられます。
月額料金は数万円程度でシステム更新もないので、ランニングコストもリーズナブルです。
業務効率を上げて人件費を削減する
クラウド型の電子カルテを導入すると、紙カルテによる業務の非効率を解消することができます。
まずは、カルテを探したり、運んだりする手間が省けます。電子カルテは、患者氏名やIDを入力すれば、すぐに検索した患者のカルテを開くことができ、パソコンさえあればどこからでも閲覧可能です。
さらに、紙カルテとは違い複数人が同時に使用することができ、「カルテが手もとにないので事務手続きができない」などの、不都合が生じません。
このように、全体の業務効率を上げることで人手不足や余分な残業が解消され、人件費の削減につなげることができるでしょう。
自由診療の電子カルテならMEDIBASEへ
自由診療のクリニックで、電子カルテの導入を検討している場合は、「MEDIBASE」におまかせください。
「MEDIBASE」は使用するパソコンの台数、利用人数は無制限で、月額39,800円と長期的に利用しやすい価格設定です。
画面はシンプルで、操作も簡単なため、業務の効率アップをめざせるでしょう。
効果的なコスト削減を実現するためにも、電子カルテの導入をおすすめします。