電子カルテと紙カルテの併用は可能?併用・移行の方法と注意点

  • HOME
  • ブログ
  • 電子カルテと紙カルテの併用は可能?併用・移行の方法と注意点

紙カルテが増え、保管場所の確保が困難になり、紙カルテから電子カルテへの移行を検討しているクリニック、診療所の経営者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

紙カルテ運用から、いきなり電子カルテに移行できるの?移行期間は紙カルテの併用できないのか?と疑問に思うこともあるでしょう。

そこで、この記事では電子カルテと紙カルテの併用方法と注意点、スムーズな移行のための準備について解説しています。最後には、電子カルテへの移行のサポートを行う、自由診療に特化したクラウド型電子カルテを紹介します。ぜひ最後までご覧ください。

電子カルテと紙カルテが併用されている理由

紙カルテから電子カルテへ移行したいと考えているものの、「できれば紙カルテと併用したい」と考える場面や課題を抱えている場合もあるでしょう。

現在では、電子カルテに全て移行するのではなく、紙カルテと併用している医院も多くなっています。

電子カルテと紙カルテが併用されている理由として上げられるのが、

  • 全カルテを電子化する手間やコストをかけられない
  • 災害などのトラブル対策
  • パソコン操作が苦手な医師がいる

などです。

ここでは、電子カルテと紙カルテが併用されている理由について紹介いたします。

全カルテを電子化する手間やコストがかけられない

多くのクリニックでは、紙カルテから電子カルテへの移行時、過去の診療でたまった紙カルテの取り扱いに悩むことが多いでしょう。過去の紙カルテは、スキャンしてデータ化し、電子カルテ内に保存することができます。

ただし、紙カルテを電子化するときには、厚生労働省から発出されている「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第5版」に従いながら、適切な方法ですすめなければなりません。

電子化の実施には、実施計画書を立てて患者さんからの同意を得ることが必要です。外部からの厳格な監査を受ける必要もあり、時間と手間がかかるのが現実です。

後述しますが、電子カルテの移行の方法はいくつかあるため、自院に合った移行の進め方を選ぶことも大切になってきます。

医師ごとに方針・やり方が異なる

電子カルテの記載はパソコンで行うため、最低限の操作は必須。パソコン操作が苦手な医師の場合、画面にばかり意識が向いてしまい、患者さんの診療に支障をきたしてしまうかもしれません。診療をスムーズに行うためにも、医師ごとに記録方法を変え、電子カルテと紙カルテを併用している場合も多いでしょう。

医師は紙カルテに記載し、その後クラークに電子カルテへの代行入力をしてもらう方法も可能です。カルテの代行入力については、厚生労働省からの通知、「医師及び医療関係職と事務職員等との間等での役割分担の推進について」に条件が次のように記載されています。

『診断書、診療録及び処方せんは、診察した医師が作成する書類であり、作成責任は医師が負うこととされているが、医師が最終的に確認し署名することを条件に、事務職員が医師の補助者として記載を代行することも可能である。』

電子カルテの場合も、医師が最終承認ボタンを押すことでログ(システム上の履歴)を残し、記録の責任の所在を明確にすることが必須です。

電子カルテへの移行の方法

電子カルテの導入が決定したらこれまで使用していた紙カルテのデータの扱いをどうするかも決定しなければなりません。

電子化は次の3パターンに分けられるでしょう。

  • 過去カルテは紙のまま運用する
  • 再来患者さんの紙カルテのみスキャンする
  • 全患者さんの過去カルテを全てスキャンする

移行作業は院内で行うのか、外部委託をするのか、手間やコストを考慮して移行の方法を検討しましょう。

パターン1.過去カルテは紙のまま運用する

紙カルテが増えないように運用していくために、過去のカルテは紙のまま運用し、新規の患者さんのみ電子カルテに記載することが1つの移行方法です。

溜まった紙カルテもスキャナーなどで電子化はせず、再診の患者さんは紙カルテを参照しながら電子カルテに記載、新規の患者さんは最初から電子カルテに記載するというルールで診察を行っていきます。

この方法なら、これ以上紙カルテを増やすことなく、電子カルテへの移行が可能です。

紙カルテと電子カルテが混在する期間はありますが、半年~1年ほどでほとんどが電子カルテのみの運用ができるようになります。

パターン2.再来患者さんの紙カルテのみスキャンする

新規の患者さんは電子カルテで対応し、再来患者さんが来た場合のみ、紙カルテをスキャンして移行するのも移行方法の1つです。

再来の患者さんも電子カルテで運用することで、紙カルテの運用を減らし、電子カルテに全て移行することができます。

患者さんが再来された際は紙カルテの保管庫からカルテを探し出す必要があるため、併用している期間は業務が増えてしまいますが、この方法でも半年~1年程で紙カルテを参照する患者さんも減り、電子カルテのみで診療できるようになるでしょう。

パターン3.全患者さんの過去カルテを全てスキャンする

開業してから日が浅いクリニックや診療所であったり、紙カルテを探す業務を完全に無くしたい場合には、紙カルテを全てスキャンし、電子カルテ化する方法もあります。

時間とコストがかかってしまいますが、スキャン後の紙カルテを確認することが無くなります。スキャン後の紙カルテは院外の倉庫などに保管し、空いたスペースを診療室の増設などに利用することができるメリットもあります。

電子カルテの移行に関する注意点

紙カルテから電子カルテへのデータの移行は、ただ単にスキャンしPDF化して保存すればよいという、単純なことではありません。厚生労働省からの通知、「診療録等をスキャナ等により電子化して保存する場合について」に準じて作業を行う必要があるのです。

カルテの情報は、個人情報や診療や治療のためにも重要な情報ばかり。クリニックを信頼し来院してくれる患者さんのためにも、高い意識を持ってスキャンなどの移行作業や、紙カルテの処理作業を行うことが求められます。

基準を満たすスキャナを用いる

「医療情報システム安全管理に関するガイドライン第5版」には、画一的な基準は具体的には書かれていません。

かといって、精度の低いものを推奨する物ではありません。診療目的の利用に十分な精度を満たしていることが求められるので、一定の制度の高さが必要です。

実は、第3版までは、『300dpi、RGB 各 8 ビット以上』の規定がありましたが、現在では一般的に、これ以上の性能を搭載しているものが多くを占めているため、記載が変わったのです。ガイドライン上には明確な数字は書かれていませんが、『300dpi、RGB 各 8 ビット以上』を基準に選択する必要があるでしょう。

参考:医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第 5.2 版 本編

参考:「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第 5.1 版」 に関するQ&A

改ざん防止の措置を講じる

電子カルテの導入後に紙媒体の記録物が発生した場合には、その都度スキャンし電子カルテ内に保存することができます。

このようなケースについて、ガイドラインには紙カルテをスキャナで取り込む際の、改ざん防止の措置についても言及しています。

クリニックや診療所の管理責任者に義務付けられるのは、以下の措置です。

  • スキャナによる読み取りに係る運用管理規程を定める
  • 読み取った電子情報と元の文書などから得られる情報と同等であることを担保する情報作成管理者の配置
  • 作業責任者により、電子署名法に適合した電子署名・タイムスタンプを遅延なく付与し責任を明確にする。

また、情報を得てからは原則1日以内にスキャンをしなければなりません。

過去のカルテのスキャンについては、実施計画書の作成や外部監査人による監査が義務付けられています。

参考:「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第 5.2 版 本編

院内の体制を整える

紙カルテから電子カルテに移行する場合、どのような方法で移行を進めるかは医療機関ごとで決定します。そのため、移行時の対応の方法や過去の紙カルテの保存方法などの周知を関係するスタッフに必ず行いましょう。

手順や方法をマニュアル化し、新しくスタッフが入った時でもすぐに引継ぎができるような仕組みづくりをしておくことが大切です。

紙カルテを破棄する場合は個人情報に注意する

紙カルテのデータをスキャンして電子化した際には、厚生労働省のガイドライン※3に準じ、電子署名とタイムスタンプを付与することで、元の紙カルテと同等の原本性を保持できるのです。

これによって、スキャン後の紙カルテは廃棄することができます。ただし、紙カルテには患者さんの重要な個人情報が含まれていますので、破棄する場合は慎重に取り扱う必要があります。

廃棄方法は焼却、溶解、シュレッダーなど。機密文書処理の専門業者に依頼することが一般的です。多くの個人情報が記載された紙カルテを病院外に持ち出すことになるので、信頼できる業者を選定することが大切です。

選定のポイントとしては、

  • 同一業者内ですべての処理工程が完結すること
  • 廃棄処理への立ち会いが可能
  • 廃棄処理証明書を発行してくれる
  • ISMS認証の取得業者

などがあります。

参考:厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第 5.2 版 本編

対象となる患者さんにカルテを電子化することを周知する

過去に蓄積された紙カルテをスキャナで電子化する場合は、事前に患者さんに情報提供する必要があります。これも、厚生労働省のガイドラインに定められた事項です。

実際には、院内掲示などを利用するなどの方法があるでしょう。できる限り患者さんの目にとまる場所に設置して、確認してもらえるようにしましょう。受付の近くなどであれば、会計時に一言声をかけることも可能です。

万が一、患者さんから異議の申し出があった際には、スキャナによる読み込みをしないようにするなど、配慮が求められます。院内で情報を共有して、適切に対応することが求められます。

実施計画書を作成する

紙カルテをスキャナで電子化する際には、実施前に実施計画書を作成することがガイドラインに定められています。ガイドラインに必要な主な項目は以下の内容です。

  • 運用管理規程の作成と妥当性の評価
  • 作業責任者の特定
  • 相互監視を含む実施の体制
  • 実施記録の作成と記録項目
  • 事後の監査人の選定と監査項目

相互監視とは当日分の作業のスキャン内容を、作業者が相互のチェックすること。実施記録は、スキャンの対象患者のID、取り込み文書枚数、取り込み日、作業担当者などを記載するもので、項目については監査に耐えうる内容にする必要があります。

監査では、ランダムに抽出した患者さんの、実施記録、紙媒体、電子化されたデータを突き合わせてチェックが行われます。

参考:「医療情報システム安全管理に関するガイドライン第5版

外部監査人によって行う

医療機関で保有されるスキャナ等で電子化を行う場合、監査を外部機関によって行うことも定められています。具体的には、システム監査技術者やISACA認定などの適切な能力を持つ監査人を指します。

また、費用はかかりますが電子化の作業自体を外部に委託することも可能です。蓄積した紙カルテの量が膨大で、院内のスタッフで行うのは非現実的な場合は委託する方が効率的でしょう。大量の個人情報を扱うため、業者の選定は、プライバシーマークを取得しているか、過去に情報の安全管理・個人情報保護上の問題を起こしていないかなどを慎重に選定する必要があります。

スムーズに移行するには準備が必要

紙カルテから電子カルテへの移行、事前の準備が必要です。

まずは、自院の特徴にフィットする電子カルテのシステムを選定することから始まります。この際に、電子カルテと紙カルテの併用ができるかも確認をしておくと、その後の運用もスムーズでしょう。

電子カルテへの移行時のサポート体制があるかどうかも、システム選択する際の重要ポイントです。

併用したい場合は電子カルテベンダーに相談する

紙カルテと電子カルテの併用をすることを予定している場合は、事前に電子カルテベンターに相談することがおすすめです。多くの電子カルテベンダーは、移行時のサポート体制を整えています。サポートを活用すれば、よりスムーズに運用することができるでしょう。

併せて、自院の診療の特徴にフィットした電子カルテの運用ができるかの確認も必要です。自由診療なのか、保険診療なのか、初期費用やランニングコストは自院の規模に合っているかなど、長期的な運用には重要なポイントです。

電子カルテについてのルールを定める

電子カルテの運用を実際に始めると、紙カルテではなかった準備が必要になります。電子カルテでは、診察までの時間にパソコンなど端末の立ち上げ、インターネットの接続、アプリケーションの立ち上げやログインが必要です。これらの準備は当たり前のことに思えますが、いつ誰が行うのかを決めておく必要があります。準備が遅れてしまえば、診察開始を遅延させてしまうからです。

また、看護師の勤務交代時には申し送りが行われます。多くの場合は、患者全体の情報を網羅的にまとめた専用のノートやファイルを用いて、情報伝達を行っています。このように慣習的に行ってきた業務についても、電子カルテ後にどのように運用するのかをルールにしておく必要があるでしょう。

事前の操作確認の研修やマニュアル作成も必要

電子カルテの運用の際には事前の操作確認の研修は必須です。正しく記録するためには、スタッフが基本的な操作をマスターする必要があります。また、電子カルテは多くの機能を備えています。これらの機能をフル活用できるようになれば、効果的な電子カルテの運用が実現するでしょう。

操作研修の際には、マニュアルを作成し準備することも必要です。マニュアルがあれば、運用中に迷うこと、わからないことがあっても見直すことができます。新しいスタッフの入職時にも役立ちます。

自由診療クリニックの電子カルテ移行ならMEDIBASEへお任せください

MEDIBASEは紙カルテから電子カルテへの移行にも対応している、自由診療に特化したクラウド型電子カルテです。

気になる費用については、台数、人数無制限で月額39,800円と低コストを実現。初期費用も、オプションを厳選することで10万円程度に抑えることができます。

特許申請中の、見たまま入力できる「直接編集機能」は、直感的に操作しやすい画面デザインが特徴です。紙カルテに慣れたスタッフにも受け入れやすいでしょう。

導入時には、操作説明のオプションがあるため、スタッフへのレクチャーも効果的に行うことができます。また、MEDIBASEでは紙カルテから電子カルテに移行したクリニックの実績も多いため、移行を考えている方は是非ご相談ください。

紙カルテからの移行は簡単なことではありませんが、一旦電子カルテにしてしまえば業務は非常に効率的になります。ぜひ、電子カルテの導入をご検討ください。