クリニック経営に必要な資格とは?
「クリニックを開業したいけど資格は必要なの?」
「クリニックを経営していく上で役立つ資格ってどんなものがあるの?」
このような疑問がクリニック経営を考える中で出てきませんか。
結論から言いますと、クリニック経営に必要な資格は医師免許のみ。しかし、医師免許を持っているだけでは経営のノウハウが学べないため、安定して存続していくことは難しいことも事実です。
この記事では、クリニック経営に役立つ資格を紹介するだけでなく、経営を始める際の流れまで解説していきます。
目次
クリニック経営に必要な資格は医師免許のみでOK
クリニックを開業し、経営していくのに医師免許さえあればほかに必要な資格はありません。年齢制限や経験年数などの条件も定められていないため、経験が浅い若手の医師でもクリニックを経営することができます。
しかしクリニックを開業することができても、経営を持続し安定して存続していくためには、医師としての経験はもちろんのこと、経営についてさまざまな知識やノウハウも必要になってきます。
経営についての知識やノウハウを持ち合わせていない場合は、資格の取得を通して経営について学んでいくこともひとつの手です。
医師免許を持っていない場合でもクリニック経営は可能
医師免許を持っていない場合でも、クリニックを経営することは可能です。その場合は、クリニックの管理者として医師免許を持っている人を配置する必要があります。
クリニックを開業したいと思っていても、「経営について知識やノウハウがない」と多くの医師が不安に感じています。
ご自身が経営について知識やノウハウを持っているならば、その経験を活かして不安を感じている医師をサポートをしてクリニックを経営することもできるので、必ずしも医師免許を持っていなければならないということではありません。
クリニック経営にあたり持っていると有利な資格
クリニックを開業するのは医師免許さえ持っていれば問題ありませんが、経営を持続していくためには経営能力を身につける必要があります。
そこでクリニックの経営能力を高めるために役立つ資格を紹介します。
これから紹介する資格を開業前に取得することで、経営に関する知識やノウハウを体系的に学べるため、今後のクリニック経営にあたって有利になっていくでしょう。
クリニック経営士
クリニック経営士とは、社団法人メディカルインフォ&コミュニケーション協会が主催する日本初のクリニックの事務長を育成するための資格です。2017年にプロジェクトがスタート、2018年に講座を開始しており、これまでに3級講座が3回、2級講座が1回実施されています。
コンセプトは、「クリニックの現場で事務長レベルの仕事を実践する人材を育成する」こと。講座内でクリニックの実習を行うなど、クリニック経営を体系立てて総合的に学ぶことができます。
累計で3級は300人・2級は100人・1級は50人の限定枠があり、クオリティ維持のため限定枠をこえる募集は行われない珍しい資格となっています。
資格取得方法
クリニック経営士講座オフィシャルサイトの申込みフォームから応募し、講座のカリキュラムをすべて修了することで資格を取得することができます。
3級講座のカリキュラム
- 座学・ワークショップ(全7講義)
- クリニック実習(OJT):3か所の医療機関の中から各人の希望で実習先を決定し、モデレーターとともに研修を実施。
- 修了テスト:講義と実習が終了後にテストを実施。合格後に修了証の発行。合格点に満たなければ再テスト可能。
2級講座のカリキュラム
- 座学・ワークショップ(全11講義)
- クリニック実習(OJT):3か所の医療機関の中から各人の希望で実習先を決定し、モデレーターとともに研修を実施。
- 修了テスト:講義と実習が終了後にテストを実施。合格後に修了証の発行。合格点に満たなければ再テスト可能。
1級講座のカリキュラム
現在検討中であり、2023年後半に開講予定。
医療経営士
医療経営士とは、一般社団法人 日本医療経営実践協会が認定する資格で、医療機関の経営に関する知識と実践的な能力を持った専門家です。1級〜3級までの等級があり、最高級の1級にいくほど豊富な知識と実践力を持っていることの証明になります。
クリニック経営は、質の高い医療を提供するだけではなく利益をあげるための経営をしなければ持続することはできません。
医療業界のマネジメントをする上での知識や経営能力を身につけることができる医療療法士は、クリニック経営をしていく上で取得しておく価値の高い資格です。
資格取得方法
一般社団法人 日本医療経営実践協会のホームページから受験エントリーをして、合格すると医療療法士の認定を受けることができます。
医療療法士試験の概要
受験資格 |
【3級】 年齢、学歴、国籍等の制約はありません 成年被後見人および被保佐人でないこと 【2級】 医療療法士3級合格者かつ協会の正会員であること 成年被後見人および被保佐人でないこと 【1級】 第一次試験:医療療法士2級合格者かつ協会の正会員であること 第二次試験:医療療法士1級試験 第一次合格者 |
試験方式 |
【3級】 五肢択一マークシート方式(50問・80分) 【2級】 五肢択一マークシート方式 (第1分野:50問・80分、第2分野:50問・80分) 【1級】 第一次試験:1,短文記述形式(10問・90分) 2,論文記述形式(2問・90分) 第二次試験:1,口頭試問(プレゼンテーション形式) 2,個人面接 |
受験料 |
【3級】 9,100円(税込) 【2級】 第1分野、第2分野の同時受験:16,000円(税込) 第1分野または第2分野のみ受験:14,000円(税込) ※各分野の合格証明書取得者が対象 【1級】 50,000円(税込) |
スケジュール |
6月中旬、10月中旬、2月下旬(3級のみ) |
病院経営管理士
病院経営管理士は、一般社団法人 日本病院会が主催する2年間の「病院経営管理士通信教育」を卒業された方に付与される認定資格です。2022年に45年目を迎える歴史ある資格で、現在までに1,163名(第42回認定まで)が病院経営管理士として活躍しています。
病院経営管理士は、病院経営を円滑に実行する能力をそなえた人材を育成することを目的としています。クリニック経営をする上で経営者として一段と能力をレベルアップできるので、持っておくと有利な資格です。
資格取得方法
一般社団法人 日本病院会の「病院経営管理士通信教育」を受講して、医療関連科目、経営管理科目などで構成された39科目49単位を修了し、リポート、スクーリング、試験、卒業論文のすべてで合格することで病院経営管理士として認定されます。
病院経営管理士通信教育の申し込み
申込期間 |
毎年4月1日~5月31日(受講申込書は毎年4月に掲載される) |
開講時期 |
毎年7月1日 |
定員 |
50名程度 |
受講資格 |
施設等の推薦者 病院経営管理士教育委員会が認めた者 |
申込方法 |
①受講申込書 ②履歴書 上記①、②を記入し、郵送にて提出 郵送先:一般社団法人日本病院会 病院経営管理士係宛 〒102-8414 東京都千代田区三番町9-15 ホスピタルプラザビル |
受講料 |
2年間で960,000円 ※1年で480,000円(前期・後期で240,000円ずつ支払う) |
医業経営コンサルタント
医業経営コンサルタントは、公益社団法人 日本医業経営コンサルタント協会が認定する資格です。病院やクリニック、介護施設など医療業界から依頼を受けて経営の現状分析や課題解決の提案をする専門家になります。
医業経営コンサルタントの資格を取得することで、クリニック経営に関する知識の習得や現状分析から課題を見抜く能力などを学ぶことができるため、持っておくとクリニック経営に有利に働くでしょう。
また資格取得後も能力の向上を図るため、継続的な研修が義務付けられるので、知識の形骸化を防ぐことができます。
資格取得方法
医業経営コンサルタントは指定講座を受講し、一次試験、二次試験に合格した後に協会の会員として登録することで認定を受けることができます。
受験資格 |
【指定講座】成年被後見人および被保佐人でないこと 【一次試験】指定講座の受講者(有効期限は翌々年度末まで) 【二次試験】第一次試験の合格者 |
実施日 |
【指定講座】e-ランニングによる受講のため、いつでも視聴可能 【一次試験】年1回(9月頃) 【二次試験】年2回(1月、7月) 【認定登録】年2回(4月、10月) |
試験方法 |
【指定講座】e-ランニングによる受講 【一次試験】筆記試験 【二次試験】論文 |
受験料 |
【指定講座】50,000円(テキスト、DVD代込) 【一次試験】10,000円 【二次試験】15,000円 【認定登録】会費:年間120,000円 登録料:初回のみ80,000円 |
防火管理者
防火管理者は、クリニックを経営する上で必須の資格です。消防法では、火災予防の対象となるすべてを防火対象物に定めており、建物の用途や収容人数によって防火管理者を選任しなければいけません。
クリニックでは建物内に30人以上収容する場合は、防火管理者を選任する必要があります。30人未満しか収容できない場合でも、テナントに入居するビルの収容人数が30人以上の場合には防火管理者が必要です。
防火管理者は、「管理的、監督的地位にあること」を求められるとともに、退職して選任者いなくなる事態を避けるため、院長などクリニックに勤務する退職する可能性がない方を選任しましょう。
資格取得方法
防火管理者の選任するための条件には2つあります。
- 防火管理業務を適切に遂行できる「管理的、監督的地位」にあること(院長など)
- 防火管理に必要な「知識・技能」を有していること
上記の2にあたる「知識・技能」を有しているとは、一般的に防火管理講習を修了することです。講習の種類には、すべての防火対象物で選任できる「甲種」と比較的小規模の防火対象物に限られる「乙種」に分かれています。
講習受講方法 |
1,地域の消防本部が実施している講習を受講 2,一般財団法人 防火・防災協会が実施している講習を受講 |
講習時間 |
【甲種新規講習】2日間(計10時間程度) 【乙種講習】1日間(計5時間程度) 【甲種再講習】半日間(計2時間程度) |
受講料 |
【甲種新規講習】8,000円 【乙種講習】7,000円 【甲種再講習】7,000円 |
防火管理講習は申し込んでもすぐに受講できないことがあります。クリニックの開業日に「防火管理者がいない」ということにならないためにも、早めに受講しておきましょう。
クリニック経営を始める際の流れ
クリニック経営を始める際にはやらなければならないことが多くあります。計画的に準備を進めていかないと予定通りに開業することができないかもしれません。
またクリニックを開業してから安定した経営をしていくためには、開業準備の段階でしっかりと調査・検討をしていくことが重要になります。
クリニック経営を始める際に、「何をしなければならないのか」「どのようなスケジュールで進めていくのか」を解説していきます。これからクリニック経営をしていく人は、開業の流れを把握するための参考にしてください。
事業計画の策定
クリニック経営を始める際に一番最初に取り組むことは、「事業計画の策定」です。事業計画とは大きく分けて「経営基本計画」「資金計画」「収支計画」から構成されています。この計画を立てることで今後のスケジュールが決まっていきます。
経営基本計画は、経営する目的や開業するにあたっての戦略など、クリニック経営の根幹をなす計画のことです。難しく感じるかもしれませんが、クリニックを開業する思いを言語化したものなので、ご自身としっかり向き合いながら整理していきましょう。
資金計画や収支計画は、クリニックを経営するための開業費用や開業後の収益などのお金にまつわる計画を指します。費用に関しては想定よりも増える可能性が高いので、余裕をもった計画を立てることをおすすめします。
土地・物件選び
クリニック経営で土地・物件選びは、患者数を左右する重要な項目です。どんなに腕のいい医師でも、クリニックに1時間以上かかるようでは通院するのは難しくなります。
開業するための物件を選定する方法には次のようなものがあります。
- 土地を買い、自分で建物を建てる
- 土地を借り、自分で建物を建てる
- 地主が建物を建て、土地も建物も借りる
- 建物を一棟借りる
- ビルなどの一室を借りる
クリニック経営において立地のいい物件の条件とはどのようなものでしょうか。
まず1つ目は、医療を必要としている人(需要)が医療機関の数(供給)を上回っている立地です。このエリアでは、医療機関が足りていないため集客が見込めます。
2つ目は競合が少ないまたは弱い立地です。地域内に同じ診療科がなかったり、あったとしてもその医療機関の評判が悪ければ集客はしやすくなります。
3つ目は認知度が高く人通りの多い立地です。人通りが多ければそれだけ人の目に触れる機会も多いので来院してくれる確立は上がります。しかし美容整形外科や精神科のように、通院が人の目に触れられたくない診療科の場合は控えたほうがいいでしょう。
土地・物件選びは時間がかかるものなので、1年前か遅くとも半年前までには選定を終わらせるようにしましょう。
資金調達
クリニックの開業において、一番の懸念材料とも言えるのが開業資金の調達です。自己資金が潤沢にあるなら悩むことはないですが、そのように恵まれた人はごく少数なのが実情です。
そこで必要となってくるのが資金調達。資金調達の方法には次のようなものがあります。
- 自己資金
- 親族など協力してくれる方からの資金提供
- 公的機関からの助成金
- 金融機関からの融資
金融機関での融資の申し込みは、土地・物件の契約ができてからになります。物件の契約が決まった段階ですぐに融資の申し込みができるように、事前に事業計画の策定をして金融機関に相談しておくことをおすすめします。
内装工事・導入機器の選定
物件の選定や資金調達の目処がついたら、物件の内装工事や医療機器の選定を行います。クリニックの内装工事は、患者さんに最適な医療を提供することを意識してスタッフの導線を考えたり、業務が効率よく行えるように設計事務所と打ち合わせをしていきましょう。
設計事務所によってコストがかなり変わってくるので、なるべく医療業界に精通している設計事務所に依頼し、複数から相見積もりをとることをおすすめします。
設計をしていく中で医療機器の選定もしていく必要があります。医療機器は高額なため、開業資金に大きな負担になってしまいます。したがって、クリニックの目的と照らし合わせて本当に必要な機器だけ導入することが重要です。
スタッフ採用・集患対策
開業に向けての最終段階では、クリニックのスタッフの採用や集患対策をしていく必要があります。クリニックの経営において、いい人材の確保や集客ができているかは経営が成功するかを左右する非常に重要な要因です。
スタッフの採用は余裕をもった期間で実施し、妥協しないことが大切になります。書類選考や採用面接では、客観的な指標を作り複数の視点で判断していくことで、「問題を起こすような人材を採用してしまった」と後悔するような事態は避けましょう。
開業したからといってすぐに患者様がきてくれるわけではありません。開業前にホームページや近隣住民へ配るチラシの作成、内覧会の開催など集患対策をしておくことで、開業直後でも患者様が来院する可能性が高まります。
まとめ
クリニック経営に必要な資格は医師免許のみでそれ以外は必須ではありません。しかしクリニック経営を成功させるためには、医療の質だけでなく経営の知識やノウハウが必要になってきます。
クリニック経営をしていくためには、経営者としての知識やノウハウを身につけておくことは重要ですが、一人ですべての業務をこなすことは大変です。
「MEDIBASE」はクリニックの業務を効率化し、経営を支援するためのクラウド型電子カルテになっています。診療業務の負担を軽減してくれ、運用コストを削減できます。
今後クリニック経営をしたいと考えている方は、少しでも業務が効率化できるようにツールの導入も検討してみることをおすすめします。