電子カルテが普及しない理由とは?普及率の現状と打開策
厚生労働省は、「2020年までに400床以上の一般病院における電子カルテ普及率を90%にする」目標を掲げています。調査の結果、2017年には85.4%と目標の目前までに迫る状況です。ところが、小規模病院や一般診療所については目標設定には含まれず、実際に電子カルテの普及率は低い水準で経過している状況です。
この記事では、電子カルテの普及の現状と打開策について、電子カルテが普及しない理由を踏まえながら解説します。記事の最後には、自由診療に特化したクラウド型の電子カルテを紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
電子カルテの普及率
2017年の厚生労働省の医療施設調査の結果、日本の病院における電子カルテの普及率は以下のようになっています。
普及率は一般病院全体、一般診療所ともに50%を下回っている状況です。
一般病院の中でも病床400床以上では普及率は85.4%と、厚生労働省の目標である「2020年までに400床以上の一般病院における電子カルテ普及率を90%にする」を目前にしています。しかし、200床未満では40%にも到達しておらず、一般診療所を含む小規模病院での普及率の低さが際立ちます。
電子カルテ普及率は伸びている?
2014年に実施された調査結果と比較し経時的にみると、2014年は一般病院全体が34.2%、一般診療所は35.0%。2017年までの3年間で、一般病院が12.5%増、一般診療所は6.6%増と、電子カルテは年々普及していることがわかります。
更に、昨今のコロナウイルスの感染拡大により、訪問診療やコロナ病棟における電子カルテの需要が高まっています。地方によっては、コロナ禍においても離島の住民が医療を受けられるよう、ICTを活用した遠隔医療相談の環境を整え、電子カルテのクラウド化を目指す取り組みも見られるほどです。
とは言え、小規模病院や一般診療所においては、普及率の上がりにくい要素が多く、両者の普及率は50%以下にとどまっているのです。
参考:令和3年度 新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金実施計画
小規模病院や診療所ではまだ普及率が低い
日本の病院全体の約7割が、200床未満の病院です。しかし、小規模病院や診療所については、厚生労働省の電子カルテ普及率の目標設定には含まれていません。実際の普及率も200床未満の一般病院は37%、一般診療所は41.6%と低い水準であり、日本全体の電子カルテの普及率が上がらない要因でもあります。
また、2020年に出された株式会社シード・プランニングの調査によると、2019年にはコロナ禍で電子カルテの市場規模低迷。しかし、2020年以降医療画像ネットワークシステムのクラウドサービスの需要が高まり、一般診療所においても電子カルテを含め徐々に市場規模が成長することを予測しています。
需要の高い小規模の病院が電子カルテを導入するには、専門性の高い診療にフィットする電子カルテの選定やコストなど、多くの課題を解決する必要があります。
クラウド型電子カルテの普及率
「日経メディカル開業サポート」の独自アンケートでは、一部の開業医が使用している電子カルテのタイプの比率が明らかになっています。
出典:第7回クラウド型電子カルテの最新シェアと、従来のオンプレミス型とのコスト比較
クラウド型が11%、オンプレミス型が86%、わからない・覚えていない3%と、クラウド型の電子カルテのシェアは低い状況です。
出典:第7回クラウド型電子カルテの最新シェアと、従来のオンプレミス型とのコスト比較
ただし、開業年数別のクラウド型のシェアを見ると、5年目未満のシェアは20%と比較的高い比率。これまで不安視されていたセキュリティー機能が向上していることや、小規模病院での使いやすさが認識され始めたと推察されます。
自由診療に対応しているクラウド型電子カルテは少ない
2010年に電子カルテのクラウド化が解禁されて以降、保険診療業界ではクラウド型電子カルテが次々にリリースされました。しかし、自由診療対応のクラウド型電子カルテは現在でも選択肢が少ないのが現状です。
自由診療では、複雑な施術内容や施術コースの管理など、保険診療とは違った電子カルテの機能が求められています。自由診療を扱う病院は比較的規模の小さいクリニックが多いことから、クラウド型電子カルテの特徴やメリットを生かした運用ができるはずです。しかし、自由診療に対応していないことがデメリットとなり、導入が進まない要因となっているようです。
電子カルテが普及しない理由とは?
日本において、電子カルテが普及しない大きな原因の1つはコストです。国が十分なインセンティブを与えながら、電子カルテの標準化推進に成功している海外と比較して、日本は十分なインセンティブがありません。特に、必ずしも経済力が強くはない小規模病院では、コストが障壁になっていることが多いのです。
その他にも、長年使用した紙カルテからの移行の不安、人的リソースに関する課題なども理由になるでしょう。
ここでは、電子カルテが普及しない理由について具体的に解説します。
紙カルテの使用歴が長く、慣れているため
長年、紙カルテを使用している病院では、電子カルテへの移行に抵抗感を持つスタッフもいるようです。一見、効率が悪いように見える紙カルテですが、使用している病院のスタッフにとっては、工夫しながら運用してきた慣れ親しんだ方法でしょう。
定着した方法から、電子カルテに方向転換することへの不安や、スムーズに運用できるまでには時間と手間を要することへの恐れなどが、電子カルテの導入への抵抗を感じる要因になっていると考えられます。
コストがかかるため
サーバーやソフトウェアなどを施設内に設置する必要のある、オンプレミス型電子カルテでは、初期費用が500万円前後と言われています。さらに5年ごとにシステム更新が行われるので、その際に初期費用と同等の費用が必要です。
また、パソコンやプリンターといったハードウェアの準備、保守点検も月2~3万程度必要で、システム以外にも費用がかさみます。小規模の病院ではこれだけの費用を電子カルテに費やすことが難しくいため、導入が遅れていると考えられます。
移行に時間がかかるため
紙カルテから電子カルテへの移行の標準的な期間は、3~6か月程度です。
移行時に時間を要す主な準備は次の通り。
- 電子カルテのサービスの選定
- 院内のスタッフへの周知・操作方法のレクチャー
- 患者情報などのデータ移行
- 各種システムとの連携
今後の自院経営にもメリットをもたらすよう、診療の専門性や特徴にフィットしたサービスを、慎重に選定する必要があります。
さらに、電子カルテの操作方法に関するスタッフへのレクチャーは、スムーズな運用には必須です。電子カルテ導入までに、日々の業務と並行しながら、時間をかけて準備を行わねばなりません。
医療用語・コードの標準化を避けるため
電子カルテに移行すると、紙カルテのように自由な表記はできなくなります。その1つが病名の表記です。
自由診療であれば病名の表記はほとんどありませんが、電子カルテを使用する保険診療を行う医療機関では、厚生労働省が出している「標準病名マスター」でのレセプト提出が求められます。「標準病名マスター」では、事前に設定されている病名を選択してカルテ上の記録として残します。このように医療用語・コードが標準化されることで、患者の個別性を捉えた病名の表記などが出来なくなるため、電子カルテへの移行に抵抗感が生じているようです。
パソコンに苦手意識を持つスタッフが多いため
医療業界自体が、他の業界に比べてITリテラシーが低い傾向があります。特に紙カルテを使用している病院のスタッフは、業務上パソコンを使用する機会がありません。個人的に使用していない限りは、操作に不慣れな場合が多いでしょう。
更に、高性能のスマートフォンやタブレットの普及によって、10~20代の若い世代のパソコンの利用率も低くなっています。年代に関係なく、パソコンに苦手意識を持つ人は一定数いることが推察されます。
非常勤医師が多いと操作の共有が難しいため
2015年の日本医師会総合政策研究機構の調査によると、非常勤医師の割合は18.3%であることが明らかになっています。医師全体の約5分の1を占めていることがわかり、多くの病院で非常勤医師が勤務していることが予測されます。
定期的に勤務する「定期非常勤」であれば、電子カルテが導入された場合にも比較的対応しやすいでしょう。
しかし、当直のみや健康診断のみといった、単発の職務をこなす「スポット非常勤」の場合は勤務日数自体も少なく、電子カルテの操作共有が困難になる可能性が高いと考えられます。
医療IT担当者を配置できないため
医療IT担当者は、電子カルテのスムーズな運用には重要な人的リソースです。電子カルテのシステムメーカーとのやり取りや、院内の情報管理などを担います。大規模病院では、人件費を確保する予算力があり、新たに人材を雇用するか、医療事務の担当の中から適任者を抜擢するかなどして、専任の担当者を配置する事が可能です。
しかし小規模病院や診療所では、人材確保のためのコストを捻出するのは、大きな負担となり、専属の医療IT担当者を配置することが難しい場合が多いでしょう。
電子カルテの普及に必要なこと・電子カルテの選び方
日本において、病院全体の電子カルテの普及率の低さは、200床未満の一般病院や一般診療所の小規模病院における電子カルテ普及率の低さが、大きく影響しています。つまり、小規模病院や診療所での電子カルテ導入が増えれば、日本の病院全体の普及率が向上すると言えるでしょう。
そのためには、低コスト、紙カルテのように記入できるデザイン、簡単な操作であることなど、自院の課題を解決できる電子カルテのシステムが選択できることが必須です。
クラウド型電子カルテなら低コストで始められる
オンプレミス型と違い、サーバーを院内設置する必要のないクラウド型の電子カルテであれば、初期費用は数十万円程度であることが一般的です。月にかかる費用も数万円程度と、ランニングコストも抑えることが可能。電子カルテ内のオプション機能を付けたとしても、全体で数十万円程度に収まることがほとんどです。オンプレミス型のように、システムの更新もないため、クラウド型電子カルテは長期的に見ても低コストで運用できるでしょう。
紙カルテのように記入できるものを選ぶ
紙カルテから電子カルテへの移行を考える場合には、記載の自由度が高いものを選ぶことが運用を成功させるポイントの1つです。
電子カルテによっては、メモを記載できるものもあります。例えば、受付で医療事務のスタッフが確認した患者情報をカルテ内のメモに残すことが可能です。看護師の問診や医師の診察時にもリアルタイムに共有でき、患者情報の把握漏れや、重複した情報収集を避けることも可能になります。
加えて、患者の痛みや創傷部位などを、シェーマや患部の写真に直接手書きをして記録できる機能を搭載したものもあります。自院が提供する医療の特徴を踏まえて、選ぶことが大切です。
自院の課題と電子カルテで解決できることを明確にする
電子カルテを導入する際には、自院の課題を洗い出し電子カルテによって解決できることを明確化しておくことは、今後の経営にも影響を与える大切な視点です。
電子カルテは次のような課題の解決を目指せるでしょう。
- 電子化による迅速化・効率化
- 情報の再利用による転記・記入ミス防止
- ビジュアル化による効果的なインフォームドコンセント
- 患者情報の一元化による個人情報保護
同時に複数の人が記載可能になり効率化が推進し、さらに過去に入力された情報を再利用できるため、検査伝票や処方箋における転記ミスも起きません。また、画像やデータなどをビジュアル化して患者と共有しやすく、インフォームドコンセントも効果的になるはずです。
操作性が簡単なものを選ぶ
働くスタッフにとっては、電子カルテの操作への不安は尽きないでしょう。電子カルテの運用は、院内の全てのスタッフで行うものです。できる限りスタッフの意見を取り入れながら、操作性が簡単な電子カルテを選定していく必要があります。
近年、ITの業界では、誰でも直感的に使用することのできるようなデザインに力を入れた製品が多く、電子カルテもその1つです。メーカーによっては、無料の体験サービスや画面を確認しての説明が準備されています。一度実際に触れてみて、自院の現状に合わせた操作性の良さを持ち合わせたサービスを検討する必要があるでしょう。
自由診療に特化した電子カルテならMEDIBASE
ここまで、電子カルテが普及率や普及が進まない理由についてご紹介いたしました。
今回お伝えした通り、小規模病院や診療所での電子カルテ導入が進めば、日本全体の電子カルテ普及率を上げることができるでしょう。
弊社MEDIBASEでは、自由診療に特化した、数少ないクラウド型電子カルテを提供しております。
MEDIBASEの主なメリットは3つ。
- 患者情報、写真、文書の管理が簡単かつ迅速
- 特商法に対応した役務管理機能を搭載
- 予約システムとの連携による受付業務の効率化
初期費用はオプションの数にもよりますが、初期費用は10万円程度。オプションを吟味すれば、さらにコストは抑えられます。月額は39,800円で使用人数は無制限と低コストです。
その他にも、直感的に操作できる画面デザインや、自由診療に対応した役務管理、複数院経営時の分院間での連携などの機能も搭載しています。
資料請求や問い合わせでより具体的な説明をいたします。自由診療で電子カルテ導入にお悩みの場合は、ぜひ一度ご相談ください。