特定継続的役務提供とは?美容クリニック側で必要な対応をわかりやすく解説
特定継続的役務提供は、「長期・継続的な役務の提供と、これに対する高額の対価を約する取引のこと」です。美容クリニックも対象に指定されている業種ですが、特定継続的役務提供について、詳しく知らない、クリニック側はどう対応すればいいいかなど、疑問も多いでしょう。そこで、この記事では特定継続的役務提供について解説しています。美容クリニック側での必要な対応についても説明しています。
目次
特定継続的役務提供とは
特定商取引法ガイドによると、特定継続的役務提供は、「長期・継続的な役務の提供と、これに対する高額の対価を約する取引のこと」とされています。
役務とは、提供するサービスを示します。
特定継続的役務は、美容や知識・技術の向上のために継続的に提供されるサービスです。ただし、その実現は確実ではなく、有償のサービスであるという特徴があります。
政令では一定期間を超える期間で、一定金額を超える対価を受け取って役務を提供することを意味しています。
参考:特定商取引法ガイドホームページ「特定継続的役務提供」
対象となる業種
特定継続的役務提供の対象に指定されている業種は7つです。
特定継続的役務 |
期間 |
金額 |
エステティック |
1カ月を超えるもの |
5万円を超えるもの |
美容医療 |
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語学教室 |
2カ月を超えるもの |
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家庭教師 |
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学習塾 |
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パソコン教室 |
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結婚相手紹介サービス |
入学金、受講料、関連商品の販売など、契約金の総額が5万円を超えるものが対象です。また、サービスがインターネット、電話、郵便などで行われる場合も該当します。
ただし、小学校や幼稚園の受験対策や、浪人生のみが対象のサービスは対象外です。
参考:特定商取引法ガイドホームページ「特定継続的役務提供」
特定継続的役務提供に対する規制と、クリニック側で必要な対応
特定継続的役務提供では、さまざまなトラブルが起きがちです。
例えば、「無料お試しキャンペーンで美容クリニックに行ったら、高額なコースの契約を強引に結ばされた」「美容クリニックの契約と関連商品を購入したが、医師と合わないのでやめたい」など。
個人の感じ方や効果の表れ方が異なるサービスなので、消費者トラブルにつながる可能性が高いのです。そのため、消費者を包括的に保護する目的で、特定商取引法において行政規制が課せられています。
書面の交付(法第42条)
特定商取引法では、クリニックが特定継続的役務を提供する場合、書面の交付を定めています。契約の締結前であれば、サービスの概要を記した「契約の概要書面」が必要です。そして、契約した後には、「契約書面」を交付することが義務づけられています。
契約書には、サービスの商品名、価格、支払期間・方法、役務の提供期間、契約解除(クーリングオフ)、中途解約などに関する内容を明記する必要があるので、記入漏れが無いように記載しましょう。
美容クリニックでは、脱毛、ニキビ・シミなどの除去、しわ・たるみの軽減、脂肪の減少、などがクーリングオフの対象です。
誇大広告などの禁止(法第43条)
誇大広告とは、大げさな表現で消費者に商品について誤った認識をあたえてしまう広告を示します。
美容クリニックであれば、「100%シミが取れる」「絶対に痩せる」など、個人によって効果が異なるにも関わらず、確実に結果が得られるような表現になっているものが該当するでしょう。このような広告は、消費者トラブルを未然に防ぐ為に禁止されています。
クリニックで行う治療について、よりよく伝えるためには文言や表現には十分注意を図る必要があるということです。
禁止行為(法第44条)
特定商取引法は、特定継続的役務提供の、契約締結について勧誘を行う際、次のような禁止行為を定めています。
- 勧誘を行う際、または締結後に解除を妨げるために事実と異なることを告げる
- 故意に事実を伝えない
- 勧誘を行う際、または締結後にその解除を妨げるために、相手を威迫して困惑させる
美容クリニックでの例としては、次のような内容です。
- 今すぐ契約すれば、安くなる」など事実と異なる内容を告げて、契約を強引に進める
- 契約解除をしたら、二度と当院では施術が受けられなくなるなどの、事実と異なる威迫
などです。
書類の閲覧など(法第45条)
患者から5万円を超える料金を前払い形式で受領する、特定継続的役務提供に係る取引を行う場合は、業務及び財産の状況を記載した書類を、サービス提供を行うクリニック内に備え付けておく必要があります。具体的な書類は、貸借対照表や損益計算書などです。
特定商取引法では、患者の希望があればこれらの書類を閲覧できるようにしておくことが義務付けられています。美容クリニックでの施術では、5万円を超える施術メニューが多いので、書類の準備は徹底しておきましょう。
契約の解除(クーリング・オフ制度)(法第48条)
特定継続的役務提供において、患者が契約を結んだ場合でも、契約解除を行うことができます。契約の書面を受け取った日から数えて8日以内は、患者はクリニックに対して契約解除・クーリングオフをすることができるのです。契約解除は書面によって行われます。
また、クーリングオフした施術に関連する商品についても、クーリングオフが可能です。美容クリニックであれば、化粧品や美容を目的とする医薬品・医薬部外品が対象になります。
ただしこれらは使用すると商品価値がなくなる消耗品です。使用している場合にはクーリングオフの対象外になるので注意しましょう。
中途解約(法第49条)
クーリングオフの期間が経過した後でも、契約期間内であれば理由を問わず、特定継続的役務提供・関連商品の販売契約を中途解約することができます。その際クリニックは、消費者に一定の金額を請求することが可能です。患者の負担額はサービス提供前後で金額が異なります。
サービス提供前では2万円を請求することができ、サービス提供後であれば、すでにサービスが提供されたサービスにかかる料金と、5万円または未提供分の料金の20%の額のいずれか低い方を足した金額を請求することができます。
契約の申込みまたはその承諾の意思表示の取消し(法第49条の2)
美容クリニックで契約を結ぶ勧誘を行う時に、次のような行為をしたことで、患者が誤認して契約の申込みや、その承諾の意思表示をした際には、取り消すことができます。
- 事実と違うことを告げ、患者が告げられた内容を事実と誤認した場合
- 故意に事実を伝えず、その事実が存在しないと患者が誤認した場合
例えば、美容クリニックであれば、副作用などのリスクを故意に伝えなかった場合、患者はその事実は存在しないと誤認する可能性があります。
説明は事実に基づいて、患者が誤認しないように細心の注意を払うようにしましょう。
事業者の行為の差止請求(法第58条の22)
美容クリニック側が次のような行為を、不特定多数の人に行った・行う可能性がある場合は適格消費者団体による差し止め請求が行われます。
- 誇大広告を表示する
- 契約を結ぶために事実とは異なることを伝えて勧誘する
- 契約を結ぶために故意に事実を伝えない
- 契約締結のため、あるいは解除を妨げるために威迫する
- 患者に不利な特約や契約解除時の損害賠償の政変に反する特約を結ぶ行為
これは現に不当な行為をしていなくても、「おそれ」があれば該当します。サービスの契約について担当するスタッフとは、適切な方法を共有していく必要があります。
規制に反した場合の罰則
特定継続的役務提供の行政規定にあたる、書面の交付(法第42条)、誇大広告などの禁止(法第43条)、禁止行為(法第44条)、書類の閲覧(法第45条)に違反した場合、業務改善指示や業務停止命令、業務禁止命令の罰則があります。
このように、規制に違反した場合には、クリニック業務を行えなくなってしまいます。また、クリニックのイメージにも関わり、大きなダメージを受けることにもなるでしょう。
そうならないためにも、規制に反さないように、クリニック全体で注意していく必要があります。
美容クリニックなどで役務管理をするなら電子カルテがおすすめ
美容クリニックで、特定継続的役務提供について適切に管理を行うためには、電子カルテの導入がおすすめです。
電子カルテには、自由診療の特徴でもある役務管理を行える機能を搭載したシステムがあります。複数回の施術もコースの進行具合を把握しやすく、契約書類なども管理しやすくなるでしょう。
記録は全て電子カルテ内に残るので、患者に提示した契約概要書類、契約書類もしっかり保管されます。
契約書面などの業務効率化につながる
特定継続的役務提供では契約前後の書面の交付が必要です。契約前には施術の概要について、定められた項目を全て網羅した書類を提示して、説明しなければなりません。そして、契約後も、サービスの商品名・価格・支払期間・方法・役務の提供期間、契約解除(クーリングオフ)、などに関する内容を明記する必要があります。記載項目が多いので、漏れがないようにしなければなりません。電子カルテであれば、概要書面・契約書面を書くことができるので、書類作成の手間も大幅にカットできるでしょう。
役務管理機能で残回数や有効期限などの確認が容易に
複数回の治療が必要なコースでは、役務管理機能が付いている電子カルテで管理がしやすくなります。
患者の施術の状況や、サービスの提供期間・有効期限なども一目で確認ができます。
中途解約の希望が生じた場合にも、いつ、どの施術を何回目までしたのかが明確です。費用の残額もすぐに確認できるため便利です。記録が残っていることで、明確な証拠にもなり得ます。何らかのトラブルになってしまった場合にも、電子カルテの記録とともに証拠として開示することも可能です。
美容クリニックでの電子カルテならMEDIBASEへ
美容クリニックで電子カルテの導入をご検討中であれば、「MEDIBASE」がおすすめです。自由診療に特化した電子カルテなので、役務管理も行えます。
契約分析は、月別、日別で集計可能です。消化状況、コース別、患者別とさまざまな視点でも契約状態を確認できます。
月の契約状況の推移はグラフでも表示されるので、経営を考える時にも役立つデータになるでしょう。
またクラウド型の電子カルテなので、諸費費用も抑えることができます。使用パソコン台数、利用人数無制限で月額45,000円〜と、維持費も抑えることが可能です。
効果的に役務管理をしたいとお考えであれば、一度ご相談ください。