頭を悩ませるクリニックのスタッフ問題とは。よくあるトラブルと対策方法
クリニックの経営で欠かせないのが、「人員の確保」と「職場の環境づくり」です。
ですが、スタッフ間でトラブルがある、新人スタッフがなかなか定着しないなど、問題を抱えているクリニックも少なくありません。
そこで今回は、クリニック経営者が頭を悩ませがちなスタッフのよくあるトラブルと、対策法についてご紹介いたします。
目次
クリニックのよくあるスタッフ問題とは?
クリニックのスタッフにまつわる人事トラブルは、どのような規模のクリニックでも起こりうる課題です。
ここでは、よくあるスタッフにまつわる問題について、フェーズごとに解説いたします。
採用から試用期間でよくある問題
採用から使用期間でよくある問題として、
- 面接時にできると言っていたことができなかった
- 試用期間がおわっても仕事を覚える気がない
- サポート体制ができておらず、すぐに辞めてしまう
などがあげられます。
面接時に言っていたことと違い、仕事ができないことや、試用期間が終わっても仕事を覚える気がないなどの場合、本格的なテストをしなかった、面接時の話を鵜呑みにしてしまった、教育体制が悪かった、実際の労働環境が求人情報と違ったなど、クリニック内の問題もあるかもしれません。
適性テストをしっかりと行う、中途採用の場合は前職での仕事の取り組み方などを話してもらうことで、書類では分からない能力を知ることもできますので、採用の仕方を見直すことが大切です。
本採用後のよくある問題
本採用後でよくある問題は、
- 採用後もスタッフとなじめていない
- お局スタッフが高圧的で新人を辞めさせてしまう
- ベテランスタッフが対立している
- ミスを繰り返したり、ミスを隠すスタッフがいる
などがあげられます。
スタッフごとのコミュニケーション能力はそれぞれで、職場でのコミュニケーションを取るかどうかは性格にもよるものですが、業務が進まないほどであれば、問題になりやすいです。
クリニックスタッフが気持ちよく働くためには、「報告・連絡・相談」が必要になります。定期的にミーティングをする、1on1ミーティングの実施などが求められるでしょう。
また、採用後の問題は、クリニックを経営するトップの院長も院内の雰囲気をチェックし、トラブルを早期発見し、解消することが必要です。
退職時から退職後のよくある問題
退職時にもスタッフにまつわる問題は良くあることです。
- 辞めたスタッフが不当解雇だとして訴えてくる
- パワハラ・セクハラなどがあったと訴えてくる
- 残業代や勤務時間が労働基準法に違反していると訴えてくる
などが退職時や退職後のよくある問題です。
訴訟に発展してしまうと、本来の業務に加え訴訟のための時間が必要になりますし、クリニックの評判にも影響を及ぼすでしょう。
「仕事ができないから明日からくるな」「他のスタッフに迷惑だから辞めろ」など、感情のみで雇用契約を切ってしまうなどの発言があると、訴えられる可能性は高くなります。
法に基づいた退職であったか、労働環境は労働法に準拠しているかどうかは必ず確認する必要があります。
スタッフのトラブルを未然に防ぐためには?
では、トラブルを未然に防ぐためには、どのような対策をすると良いのでしょうか。
ここでは、クリニックにおけるスタッフのトラブルを未然に防ぐ方法についてご紹介いたします。
コミュニケーションが取れる場を用意する
スタッフ同士のコミュニケーションが取れるような食事会や歓迎会、送別会などのイベントを開催したり、定期的にスタッフの意見を出し合う場を用意することはトラブルの防止につながります。
お互いがどう感じているのか、どうしたらより良くなるかなどは、勤務中にはなかなか時間がなくて話せないことも多いでしょう。
また、スタッフ同士の親密度が低ければ、仕事のやりがいや良い関係性の構築もできず、職場の雰囲気も悪くなってしまいます。
意見を交換したり、スタッフ同士の交流ができる場を作ることによって、「意見が溜まってしまい退職する」「あまりなじめずに退職する」などの危険性を防ぐことができます。
スタッフが相談しやすい場を作る
忙しいからといって、言葉遣いが荒くなってしまったり、高圧的態度を取ってしまうと、「この人には相談ができない」「怒られるかもしれないから、直す方が良いことでも言わない」などの思考に繋がってしまい、スタッフの退職やトラブルに発展してしまいます。
忙しくて意見交換会を開く余裕がない、という場合でも、普段からスタッフが相談しやすい雰囲気づくりをすることが必要になるでしょう。
また、クリニックのトップである院長にはなかなか相談しづらい、という悩みを持っているスタッフにも対応できるよう、事務長などの相談がしやすいスタッフを窓口としての役割に任命することもよいでしょう。
経営者として客観的に問題を把握する
スタッフを信頼することも大切ですが、院長は経営者として客観的に問題を把握し、解決する能力も求められます。
スタッフそれぞれに意見があり、院長が良いと思って行っていることも、不満のあるスタッフもいるかもしれません。
その際には、感情的になったりせず、経営状況や院内の雰囲気を客観的に確認し、どのように対処すべきかを考える必要があるでしょう。
例えば、新人スタッフはベテランスタッフに教育を全面的に任せている、という場合でも、ベテランスタッフは業務は円滑に行うことができるが教育に関してはスキルが足りず、なかなか新人スタッフが育たない、ということもあるでしょう。この場合、特定のスタッフが悪いと決めつけたり、時間が解決するからと放っておくのではなく、一歩下がった視線で、「院内の教育制度を変えるべきか」「ベテランスタッフに教育の方法を伝えるべきか」など、さまざまな解決案を策定する必要があるでしょう。
結果を出したら褒める・励ますことが大切
トラブルを起こすスタッフの中には、「せっかく頑張っているのに、褒められない」「ミスしても責められるばかりで、嫌になる」という思いを抱いている方も多いです。
認められない・責められすぎることによって、不満が爆発してしまい、トラブルに発展することもあります。
このようなトラブルを防ぐためにも、「いつもありがとう」「○○の対応が上手くなったね」などの励ましの声かけや、ミスをしてしまったスタッフに対して責めたり怒ったりするだけでなく、スタッフが反省した後は「期待しているから、次に活かしてね」「次は気を付ければ大丈夫」など、励ましの言葉をかけることも大切です。
同じトラブルは起こらないように対策を考える
トラブルを未然に防ごうとしても、人との関係性ですので、トラブルが起きてしまうこともあるでしょう。
その場合には、同じトラブルが起こらないように対策を考える必要があります。例えば、新人スタッフがすぐに辞めてしまった場合は、「面接時にキチンと業務の進め方などについて伝えられていたか」「教育体制は整っていたか」「相談できるスタッフはいたか」「高圧的な言い方をする人は居なかったか」など、さまざまな観点から原因を明確にし、そこを改善していく必要があるでしょう。
問題のあるスタッフがいる場合は?
社内の体制やコミュニケーションは取れていて、改善の施策も行っているが、どうしても高圧的な態度をとるスタッフがいる、仕事ができず、他社員に迷惑をかけている、遅刻や欠勤が多いなど、改善ができない場合には、該当のスタッフに退職してもらうことも視野に入れなければなりません。
その場合、労働法に基づき、適切な理由を持って退職勧告をしなければなりません。
その際のポイントについてご紹介いたします。
問題行動を指摘する
まずは、問題行為を指摘し、スタッフに自覚をさせることが必要です。
普段からこまめに指導をし、スタッフの行動がどのような影響を及ぼすのかを客観的に正しく伝えることが大切です。
本人が問題点を充分に自覚していれば、「不当な解雇だ」「納得がいかない」などの反発を防ぐことができるでしょう。
問題が起きた内容を記録しておく
指導内容や改善ができていたか、スタッフの行動によって起こった問題などを詳しく記録しておきましょう。
日々の指導事項をノートに書き込んでおく、問題があった場合は始末書を書かせるなども有効です。
始末書を書かせる場合には、就業規則などに始末書のルールを具体的に規定しておく必要があります。
慎重に退職を勧める
解雇や退職勧告をする場合には、慎重に退職を進めましょう。
一方的に否定をしたり、感情に任せて解雇させてしまうと、反発されたり、訴訟につながる可能性があります。
伝える際にも、「頑張ってくれたけれど……」「続けたいことは理解しているけれど……」と前置きをしたうえで、スタッフの全てを否定している訳ではないことを伝えてから、本題に入ると良いでしょう。
採用時に契約書・身元保証書を提出してもらう
採用時には、クリニックでのルールや禁止事項などを記載した誓約書にサインをしてもらうことも大切です。問題が起こった際にそのルールを破った行為がある場合には、退職後に訴えられたとしても有利に進めることができるでしょう。
また、身元保証書を提出してもらうことによって、無断欠勤などが続いた際に親や親族に連絡をすることができます。
まとめ
クリニックを経営していく中で、スタッフが気持ちよく働けるかどうかはとても大切です。
トラブルの多い職場では、人手不足が続き、普段の診察にも影響が出てしまうでしょう。また、態度の悪いスタッフがいる、スタッフがころころかわるクリニックは、患者からの口コミが悪くなってしまうといった問題も起こりかねません。
トラブルは未然に防ぐことも大切ですが、怒ってしまった時には速やかに対処をし、繰り返さないようにすることも大切です。
患者にとってもスタッフにとっても良いクリニックにするために、スタッフ同士のチームワークを強め、長く働いてもらえるような環境を整えていきましょう。