紙カルテのデメリットとは。電子カルテとの比較とよくある疑問

 

紙カルテは低コストで、パソコン操作などの難しい知識も必要なく、緊急時にも強いことが魅力です。

しかし紙カルテを使用している医療機関の中には、保管スペースの確保や情報共有・事務作業が非効率的になるなど、デメリットを感じている方も多いのではないでしょうか。

今回は、紙カルテのデメリットや電子カルテで解決できる紙カルテの課題・効果的な併用方法などをご紹介します。

紙カルテのデメリットとは

昔から利用されていて歴史の長い紙カルテですが、運用においてはいくつかのデメリットがあります。

主な紙カルテのデメリットは次の3つです。

  • 共有に時間や手間がかかる
  • 保存場所が必要になる
  • 読みづらい・判別に時間がかかる

これらのデメリットは、業務の効率化を妨げるだけでなく、医療業務上のミスにもつながりかねない危険性があるため注意が必要です。

共有に時間や手間がかかる

紙カルテは1人の患者さんに1部しかありません。他のスタッフが記録や閲覧をしている間は、使用することができないため、患者さんの情報共有には時間がかかります。このため、患者さんの待ち時間が増えたり、情報に不足や重複が生じたりと、患者さんに負担をかける可能性があります。

また、患者さん来院時の紙カルテの流れを見ると、手間がかかることもわかります。

  1. カルテ棚から該当カルテを探す
  2. 診察室に運ぶ
  3. 診察終了後に回収する
  4. 事務処理
  5. 保管庫に収納する

これら一つ一つの動作に、スタッフの時間がとられてしまうのです。

保管場所が必要になる

紙カルテは保管場所が必要です。特に、長年診療をしているクリニックや診療所では患者さんが増え、それに伴い紙カルテも増加していきます。加えて日本では、法律によって、診療録(カルテ)の保管期間は「診療が完結した日」から5年間と定められています。

つまり、現在は来院のない患者さんのカルテも保管する必要があり、診療期間の長い医療機関ほどカルテの保管場所の確保が課題になります。

院内のスペースにも限りがあるので、このような保管場所の確保は紙カルテ運用時の課題の1つになります。

参考:保険医療機関及び保険医療養担当規則 | e-Gov法令検索

参考:医師法 | e-Gov法令検索

読みづらい・判別に時間がかかる

看護師の間で、「カルテが読みづらい」「字が読めなくて対応に時間がかかる」という声が多く聞かれます。中には、医師の指示が読めなかったので、確認をすると怒られたという方も。

看護師だけでなく医療事務員も、医師の記録の読みづらさへの対策に苦労しているようです。忙しい医師に配慮して、医療事務の先輩や看護師に確認するなど、判別に時間・手間をかけています。

読みづらさは、読み間違いを起こし、医療ミスにつながるリスクがあるため、優先度の高い改善すべき課題の1つです。

紙カルテのメリットは?

電子カルテの普及によってデメリットが目立つようになった紙カルテですが、メリットもあります。

  • コストが安い
  • PCなどの新しい知識を覚えずに済む

これらのメリットは、電子カルテのデメリットを補うことも可能です。自然災害等の緊急時には、紙カルテが活躍しています。

ここでは上記3つの紙カルテのメリットについて詳しく解説していきます。

コストが安い

紙カルテに必要なのは、用紙やファイル、ペンなどです。これらがあれば運用を開始することができます。そのため導入コストは安価に抑えることができます。

一方で、電子カルテの場合はパソコンやスキャナーといった端末機器、サーバーなどのシステム機器といった、高額な初期投資が必要です。院内にサーバーを設置するオンプレミス型電子カルテは初期投資だけで300〜500万円程度と言われています。

さらにシステム更新やメンテナンスなどランニングコストもかかります。紙カルテは初期投資も安価ですし、維持費も電子カルテのよう ので長期的にみてもコストが安く抑えられるのがメリットです。電源も必要ないので電気代もかかりません。

PCなどの新しい知識を覚えずに済む

医療業界は他の業界と比べITリテラシーが低い傾向があります。長年紙カルテを使用してきた場合、パソコン操作に不慣れなスタッフが多いでしょう。

さらに、スマートフォンの普及により日本の若者のパソコン離れが生じています。2020年の内閣府の調査では、スマートフォンの利用率は31.2%なのにくらべ、デスクトップパソコンの利用率は2.9%と、低くなっています。

紙カルテはペンと用紙さえあれば使用できるため、スタッフがパソコンなどの機器に関する新しい知識を覚えずに済むのです。

紙カルテのデメリットを解決できる電子カルテのメリット

ここまで紙カルテのメリット・デメリットについて解説してきました。

ここからは電子カルテについて解説していきます。

電子カルテには紙カルテのデメリットを解決できるメリットが多くあります。主なメリットは次の4つです。

  • リアルタイムでの共有が可能
  • 字が読みやすい
  • 保管場所が必要ない
  • 文書作成を効率化できる

これら電子カルテのメリットによって、自院の課題解決を図ることも可能でしょう。

リアルタイムでの共有が可能

電子カルテはカルテを閲覧できるパソコンやタブレット端末があれば、どこからでも記録や閲覧ができます。さらに、他のスタッフが記録や閲覧をしていても同時に使用できるので、リアルタイムに記録や情報収集が可能です。

紙カルテが手元にないことによる、「記録ができない」「事務処理ができない」といった不便さや時間の消費を解消できます。

患者さんに対する情報収集の重複や情報の取り漏れなどを防げる上、事務処理も早いので、待ち時間も短縮できます。患者さんの負担も軽減されるでしょう。

字が読みやすい

電子カルテはパソコンやタブレットで記録します。書類のサインなど、一部手書きが残りますが、基本的にはデジタルでの入力です。

このため紙カルテのデメリットの1つである、「読みづらさ」「判別に時間がかかる」という問題は解消されるでしょう。

更に、電子カルテは、

  • 診療計画
  • 医師からの指示内容・実施内容
  • 投薬など

といったそれぞれの項目が混合しないように表示されているため、どこに何が書いてあるのかが分からないといった状況も起きにくくなるでしょう。

また、重要な内容の記載ミスや、読み間違いによる医療事故の予防につながります。

保管場所が必要ない

診療期間が長くなると患者さんが増え、紙カルテも増えていきます。その上、5年間の保管義務があるので、収納スペースの確保が課題になります。一方電子カルテは、入力した患者情報の全てがサーバーに保存されるので、保管スペースが必要ありません。

とはいえ、オンプレミス型の電子カルテでは、サーバーを院内に設置するのでスペースが必要ですが、紙カルテのように増えることはないので、決まったスペースさえ確保できれば問題ありません。

また、クラウド型電子カルテであれば、インターネットを介してクラウド業者のサーバーにカルテデータが保存されるため、サーバーのスペース確保も不要です

文章作成を効率化できる

電子カルテには、診断書や他院への紹介状などの各種書類のテンプレートが揃っています。更に、自院の診療の特徴に合わせて作成することも可能であり、大変便利です。

紙カルテの場合、対象の患者さんのカルテを過去から現在まで確認した上で、間違いのないように転記、漏れなく記載する必要がありますが、電子カルテでは文書内容をコピーできるので、転記ミスや漏れを予防できます。診療期間の長い患者さんや、病状が複雑な患者さんの場合、書類作成が何度も必要になるケースもあるでしょう。電子カルテは、前回の情報がデータとして保存されているので、参考にしながら作成でき、時間や手間を省けるため、効率的です。

電子カルテのデメリットは?

メリットの多い電子カルテですが、避けられないデメリットもあります。

  • 定着するまでに時間がかかる
  • 運用コストがかかる

これらがよく指摘される電子カルテのデメリットです。

ただしこれらの内容をよく理解して、対処方法をしっかり考えれば自院の紙カルテにおける課題解消に繋げられるでしょう。

定着するまでに時間がかかる

電子カルテにはさまざまな機能が搭載されています。このため、スタッフが操作に慣れ、運用がスムーズになるまでに一定の時間がかかることがあります。

さらに、パソコン操作に不慣れなスタッフや、導入に非協力的なスタッフがいた場合、意識の改善も課題になるでしょう。

こういったデメリットを減らすには、事前に電子カルテを導入する意義や、患者さんや自院が得られるメリットをスタッフに説明する必要があります。電子カルテベンダーによっては、電子カルテの操作説明のサポートもしてくれるので、活用すると良いでしょう。

運用コストがかかる

運用時にはコストがかかることも、電子カルテのデメリットです。

とくにオンプレミス型の電子カルテでは、サーバーを院内に設置する必要があるので、導入費用に300〜500万円程度が必要といわれています。さらに保守点検やシステム更新時にも費用がかかるので、維持費も高額になりがちです。システムが稼働しているサーバーは年中電源につないでいるため、電気代も必要になります。

コストを抑えられるクラウド型電子カルテとは?

同じ電子カルテでも、クラウド型はオンプレミス型と比較し、低コストでの導入・維持が可能です。

クラウド型電子カルテは、インターネットを介して企業のクラウドサーバーにデータを保存するシステムです。

クラウド型の初期費用の相場は10万円程度で、月額の利用料金も数万円程度と低価格です。そのため、クリニックや診療所など、高額な運用コストが理由で電子カルテ導入を見送っていた場合でも検討しやすい価格といえます。ベンダーによっては24時間365日有人監視体制のデータセンターで運用されているので安心です。

電子カルテに関するよくある疑問

ここまで、紙カルテと電子カルテのメリット・デメリットについて、解説してきました。それぞれの特徴や違いを理解したうえで電子カルテを導入すれば、紙カルテのデメリットによる課題解決に繋げられるでしょう。

しかし、実際に電子カルテを検討すると、他にも疑問が生じることでしょう

ここでは、電子カルテに関するよくある2つの疑問について説明します。

導入にはどのくらいの期間がかかる?

電子カルテの導入の流れは次の4段階です。

  • 電子カルテのサービスの選定
  • 要件の確認とシステムの設定
  • 試験運用
  • 運用開始

加えて事前準備には、院内のスタッフへの周知・操作方法のレクチャー」「患者情報などのデータ移行」なども必要です。

オンプレミス型では、サーバーや院内ネットワークの設定などに時間が必要で、数か月程度の期間を要します。

クラウド型は、パソコンなどの端末とインターネット回線があれば稼働できるので、早ければ1カ月程度での導入が可能です。

紙カルテとの併用は可能?

紙カルテと電子カルテを併用することは可能です。

とくに紙カルテから電子カルテへの移行期に併用すると、業務負担を軽減し効率的に移行作業を進められるでしょう。

移行時の併用方法のポイントは以下の2点です。

  • 新規患者、再診患者を電子カルテへ記載
  • 再診患者のみデータをスキャンして移行

電子カルテ化する対象患者を絞り、その他は紙カルテを使用することで、通常業務と並行しながら電子カルテへ移行できます。電子カルテ導入までの時間短縮としても効果的です。

自由診療の電子カルテならMEDIBASEへ

「MEDIBASE」は、自由診療に特化した、クラウド型電子カルテです。

保険診療とは違った管理が必要な自由診療に特化し、役務管理や経営管理に関わるデータ分析などの機能が充実しています。画面デザインは紙カルテと同様に操作しやすく、日々の業務効率の向上も目指すことができるでしょう。

さらに、使用するパソコンの台数や利用者は無制限で、月額利用料は39,800円と低価格です。

自由診療を扱うクリニックや診療所で電子カルテの導入をご検討の場合は、ぜひ一度ご相談ください。