電子カルテとは?導入費用・メリットなど徹底解説
クリニックや診療所の新規開業に伴い導入が増加している電子カルテ。中小規模の医療機関では導入費用や運用コストの問題で、普及が遅れています。
日本政府は地域医療連携や医療情報の標準化を目指すべく、電子カルテの導入を推奨しています。そんな電子カルテとは、一体どのようなものなのかをしっかりと理解しておく必要があるでしょう。
この記事では、電子カルテ導入のメリットや導入費用などについて、徹底解説していきます。
目次
電子カルテとはどんなもの?
電子カルテとは、患者さんの診察内容や診断結果、診察の過程や処方箋などを記載した情報を電子化したデータとして保管するシステムのことを指します。
データはすべてデータベースに保管されるため、どの場所からでも複数の端末で閲覧が可能です。また、紙カルテのように保管場所を確保する必要がなく省スペースでの運用が可能になります。
電子カルテを導入することにより作業効率が上がり、紙カルテで運用していた時よりも業務時間短縮などのメリットもあります。大規模な病院向け、小・中規模のクリニック、診療所向けがあるため、導入前に自院の診療スタイルなどを踏まえてよく検討する必要があります。
オンプレミス型とクラウド型の二種類がある
電子カルテには、「オンプレミス型」と「クラウド型」の二種類があります。導入の前に、それぞれの特徴やメリットを理解し、どちらが自院に向いているかよく検討しましょう。
オンプレミス型は、大規模な病院でよく使用され、これまでの主流であった電子カルテです。自院にサーバーコンピューターを設置し、データの管理・保存を行います。自院にサーバーがあるため、「セキュリティ強度が高い」「高度な医療機器との連携が可能」といったメリットがあります。
クラウド型は、自院にデータを管理するサーバーを設置せず、クラウド上でデータの管理・保存を行います。クラウド上のサーバーを利用してカルテの管理・編集・保存などを行うため、インターネット接続が必須です。サーバー費用がかからないため、費用も安くなりがちなのも特徴です。
電子カルテの普及率は?
厚生労働省が公表している「医療施設調査」によると、2017年(平成29年)の一般病院における電子カルテの普及率は46.7%です。病床数が多い医療機関では85.4%ですが、一般診療所では41.6%とまだまだ使用されていないことが分かります。
しかし、新規開業により電子カルテの導入率が増加傾向にあり、今後も医療のデジタル化が進んでいくと考えられます。
日本や海外の電子カルテの普及率については、こちらの関連記事もご確認ください。
電子カルテの使用で守るべき「電子保存の三原則」
現在、電子カルテの導入が進んでいますが、以前は電子データとして記録を残すことは認められていませんでした。1999年、厚生労働省が電子カルテ普及のために「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」を制定しました。厚生労働省のガイドラインによる電子保存の三原則は以下の三つです。
- 真正性の確保
- 見読性の確保
- 保存性の確保
これらの要件に対する対応は運用面と技術面の両方で行う必要があるということです。分かりやすく簡単に説明していきます。
詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
関連記事:電子カルテの「電子保存の三原則」について
真正性とは
「真正性の確保」とは、第三者から見たときに、いつ誰が記入・編集したのか分かるようにしておく必要があるということです。なりすましや違法な書き換えが行われないような環境を整えるために、IDやパスワードの共有・使いまわしも禁止されています。
つまり、カルテの改ざんや消去を行えないような対策をすること、カルテの改ざんやハッキングなどを防ぐためのセキュリティ対策をすることが求められています。
見読性とは
「見読性の確保」とは、電磁気的記録は紙カルテのように誰からでも「見える」「読める」ようにしておく必要があるということです。
つまり、電子カルテのデータの内容がすぐにはっきりと読めること、紙カルテと同じ形式で印刷も可能な状態が求められています。そのためには、電子カルテを使用する際に必要なソフトや機器を整備して、システム障害が発生した際にもカルテが読めるようにバックアップを取っておくなどの対策が必要です。
保存性とは
「見読性の確保」とは、電磁的記録に記録された事項について、保存すべき期間中は復元可能な状態で保存できる対応をしておく必要があるということです。
つまり、真正性と見読性を備えた電子カルテを、患者さんの最終来院日より5年間は閲覧可能な状態で保存しておく必要があります。そのためには、コンピューターウィルスやシステム障害によりデータが損失・破壊されるのを防ぐための対策が必須です。
電子カルテの導入費用は?
オンプレミス型の場合 |
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初期費用 |
約300万円~500万円 |
その他の費用・ランニングコスト |
月額2万円~5万円 |
クラウド型の場合 |
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初期費用 |
10万円~数十万円 |
その他の費用・ランニングコスト |
1万円~数万円 |
電子カルテを導入する際にかかる初期費用は、電子カルテベンダーや機能によって変わります。
費用に大きな差がでるのは、オンプレミス型かクラウド型かどうかです。また、電子カルテに互換性のあるレセコン(レセプトコンピューター)を準備するかどうかによっても変わります。
ここでは、オンプレミス型の場合とクラウド型の場合の導入費用の相場についてご紹介いたします。
オンプレミス型の場合
オンプレミス型の場合は、自院の施設内にサーバーやソフトウェアなどのシステムを設置する必要があるため、病床数の多い大きな病院に向いています。初期費用はクラウド型に比べて高めの300~500万円程度が必要です。
オンプレミス型の電子カルテと互換性があるレセコンも導入する場合は、電子カルテの初期費用に加えて150~200万円程度かかります。オンプレミス型の電子カルテ、レセコンに毎月の保守費用が2~3万円程度必要です。
また、オンプレミス型は5年リースが必要で、5年ごとの定期的なシステム買い替えのために高額なコストが発生します。これらのことを踏まえたうえで、よく検討しましょう。
クラウド型の場合
クラウド型の場合は、自院にサーバーを設置する必要がなく、小・中規模の診療所やクリニックに向いています。
基本的には、すでに使用しているパソコンやタブレット端末に専用のソフトやアプリをダウンロードして使用するため初期費用を抑えられます。初期費用は十万円~数十万円で、月額費用は1万円~数万円程度が相場です。
導入費だけ見るとクラウド型は低コストに抑えられますが、運用後のサポート費が高くなる場合もあります。
電子カルテを導入するメリット
電子カルテには、紙カルテでは不可能だったさまざまな利便性を備えています。紙カルテで運用をしている時に比べて自動化される業務が多いため、作業効率アップしてスタッフの負担も軽減できます。
電子カルテを導入することによるメリットは病院側だけではありません。電子カルテ導入後に病院と患者さんの双方に、どのようなメリットがあるのかご紹介します。
保管スペースを少なくできる
電子カルテは、電子化されたデータをすべてサーバーで管理するため、紙カルテのように保管場所を確保する必要がありません。紙カルテでは、受付で通院中の患者さんのカルテを管理するカルテ棚以外にも、カルテの保管期間に定められている5年分のカルテを保管するスペースが別途必要です。
一方の電子カルテでは、クラウド上にデータを保存するため、保管庫などが必要ありません。
カルテを保管するためのスペースが無くなると、診察室の増設や待合スペースを広くとれるなど、空間の有効活用ができるためクリニックの収益アップに繋げることもできます。
情報をすぐに共有できる
電子カルテは、各パソコンやタブレット端末で同じ情報を閲覧できます。一台の端末で情報の編集・追加・削除を行うと、リアルタイムで他の端末も書き換えられるため、離れた場所にいるスタッフ間の迅速な情報交換が可能です。
また、クラウド型電子カルテでは、インターネットに接続できる環境であれば、クリニック外でもカルテの閲覧・編集が可能です。タブレット端末やスマートフォンを持ち出し、往診や自宅でのカルテ閲覧に活用できます。
ヒューマンエラー防止になる
紙カルテでは、医師が直接手書きで記入するため、文字が読み取りにくかったり、誤った読み取りをしてしまったりすることがあります。電子カルテでは、すべてのスタッフが読み取れるテキストベースで管理するため、読解に時間がかかる、誤った理解などのヒューマンエラーが起こりません。
また、電子カルテに取り込んだ検査結果や画像を合わせて確認することもでき、文字だけでは伝わりにくい情報共有も可能です。入力の自動化や、選択ミスなどを知らせる機能が付いている製品もあり、ヒューマンエラーを防ぎ、安心・安全な医療を提供することにも繋がります。
院内の情報共有が容易になる
電子カルテに入力された情報は、リアルタイムで連携している全てのパソコンやタブレット端末に反映されるため、院内での情報共有が簡単です。患者さんの移動に合わせて紙カルテを移動させる手間が省けるだけでなく、受付からの伝達事項なども瞬時に診察室に共有できます。
また、別のシステムから検査結果やCT画像などの取り込みも可能で、検査結果をわざわざ別の場所まで確認しに行く必要がなくなります。検査結果や画像を自動で取り込むシステムもあるため、保存する手間が省け便利です。
電子カルテのデメリット
メリットの多い電子カルテにも、デメリットがいくつか存在します。
主な電子カルテのデメリットは以下の4つ。
- 移行に手間・時間がかかる
- 操作に慣れるまで時間がかかる
- 運用コストが必要
- 停電やシステムダウンで業務が止まる可能性がある
電子カルテのメリットとデメリットをよく理解した上で導入ができるよう、ここでは上記のデメリットについて解説いたします。
移行に手間・時間がかかる
電子カルテを診察で運用するためには、これまで紙カルテで管理していた患者情報をデータとして移行する作業が必要です。
患者数が多い場合は移行にかなりの時間を要するため、早めに移行作業を行う必要があります。
電子カルテベンダーには移行サービスを行っているところもありますが、訪問費や対応費などの別途費用が必要になります。
操作に慣れるまで時間がかかる
電子カルテシステムの使い方や便利な機能の設定など、操作に慣れるまでどうしても時間がかかってしまいます。紙カルテで長年診療していたクリニックでは、パソコンの扱い自体に慣れていないスタッフも多いため時間がかかる傾向にあります。
また、電子カルテとレセコンが違うシステムの場合は、二つの画面で操作したり違う設定を覚えなおす必要があったりと、さらに時間を要してしまいます。
パソコン操作の得意なスタッフが率先して操作方法を覚えて、苦手なスタッフのフォローをするなどした対応する必要がありそうです。
運用コストが必要
電子カルテを導入し運用する際は、初期費用とは別に追加費用などの運用コストがかかります。オンプレミス型かクラウド型か、病院・診療所の規模などにもより差がでますが、下記にあげるようなさまざまな運用コストが必要です。
- システムの更新にかかる費用
- 他のシステムを連携させる費用
- サポートやメンテナンスにかかる費用
- 定額制の場合はランニングコスト
電子カルテを運用する際のコストは、メーカーや製品、定額制であればプランにより大きく異なります。システム更新費やメンテナンス費、ランニングコストなど運用に必要な費用をよく把握し、適切な価格で導入できるように選びましょう。
停電やシステムダウンで業務が止まる可能性がある
オンプレミス型、クラウド型電子カルテのどちらにも共通するのが、停電や災害、インターネット環境の不具合などで一時的に電子カルテが使用できず業務が止まる可能性があるという点です。
クラウド型の電子カルテであれば、サーバーが無事であればデータを取り出すことは可能ですが、オンプレミス型の場合、サーバーが水没や故障が起こった場合、多くの患者さんのデータを失うことになります。
導入の際は万が一のことがあった時のサポート体制について確認しておく必要があるでしょう。
導入が進んでいるクラウド型電子カルテのメリット
これまでは大規模な病院では自院にサーバーを設置するオンプレミス型の電子カルテが主流でした。初期費用や運用コストが高くなるオンプレミス型は、中小規模の病院での導入が難しく普及が進みませんでした。
しかし、クラウド型電子カルテの登場により、その利便性から年々普及が進んでいます。
出典:第7回クラウド型電子カルテの最新シェアと、従来のオンプレミス型とのコスト比較
開業年数別のクラウド型のシェアを見ると、5年目未満のシェアは20%と比較的高い比率。これまで不安視されていたセキュリティー機能が向上していることや、小規模病院での使いやすさが認識され始めたと推察されます。
中小規模の病院や診療所でも導入されているクラウド型電子カルテのメリットを解説します。
低価格での導入・運用が可能
クラウド型電子カルテの最大のメリットは、自院に高額なサーバーを設置する必要がないため低コストでの導入が可能な点です。コンピューターとインターネット環境が整っていればどんなクリニック・診療所でも運用できます。
オンプレミス型に必要なサーバーの購入費や保守管理を行うための人件費がかからないため、オンプレミス型に比べて低コストでの運用が可能です。どんなパソコンでも運用可能なため、初期導入のために新しくパソコンを買い替える必要はありません。
サーバーを院内に設置する必要がない
自院の施設内にサーバーを設置する必要のないクラウド型電子カルテは、中小規模のクリニックでも導入しやすくなっています。自院にサーバーを設置するとなると、初期費用がかかるだけでなく、それなりのスペースも必要です。
クラウド型の電子カルテのサーバーはクラウド上にあり、インターネット環境とウェブブラウザがあるパソコンやタブレットの準備だけで運用を開始できます。また、サーバーはサーバー管理会社が管理・監視しているため、一貫して管理を任せることができます。
院内にデータを残さないため、BCP対策になる
BCPとは「事業継続計画」のことで、災害や緊急事態発生時の被害を最小限に抑えて、可能な限り早く復旧させるための対策のことです。
クラウド型の電子カルテは、データを保管しているサーバー管理会社が24時間監視しています。サーバーなどにトラブルが発生してもサーバー管理会社が対応するため、自院にサーバーを設置して管理するよりも素早い対応を取れます。
また、緊急時や災害発生時にはカルテのデータ確認のほかにも、患者さんやスタッフの安全管理も行う必要があります。データの確認やシステム復旧作業はサーバー管理会社へ任せられるという点でも安心です。
メンテナンス作業・ データバックアップが不要
電子カルテは、コンピューターでデータなどを管理・保存しているため、使いやすさを保つためには、システムのアップデートやサーバーの保守管理などの定期的なメンテナンスが必要不可欠です。
オンプレミス型や紙カルテはバックアップや整理を自分たちで行うか、エンジニアを医院に呼び、メンテナンスをしてもらう必要があります。一方のクラウド型は、アップデートやバックアップが自動で行われるため、医院の負担がありません。
クラウド型電子カルテを導入すべき医療機関とは?
電子カルテの利便性が高いことは分かりましたが、診療科目や診療スタイルなどにより向き・不向きな医療機関があります。
クラウド型の電子カルテが向いている医療機関とは、以下のようなところです。
- 分院展開している医療機関
- 在宅・訪問診療を行っている医療機関
- 老人施設・介護施設を管理している医療機関
上記のような医療機関は決まったスタッフで毎日診療をする訳ではなく、入れ替わりのあるメンバーで情報を共有したり、院外からの情報をまとめる必要があるため、クラウド型の電子カルテが向いていると言えます。
自由診療向け電子カルテ導入ならMEDIBASE
電子カルテは、保険診療が多い病院と自由診療が多い病院とでは、導入するカルテが変わってきます。
保険診療が多い病院では、レセプト一体型の方が良い可能性もあり、オンプレミス型とクラウド型どちらもベンダーが多いため、選ぶ選択肢も増えますが、自由診療の場合は、オンプレミス型の電子カルテが多く、クラウド型の選択肢が少ないという現状があります。
弊社が提供しているクラウド型電子カルテの「MEDIBASE」は、自由診療クリニック向けに開発された自由診療に特化した電子カルテです。
ここでは、MEDIBASEの特徴やメリットについてご紹介いたします。
自由診療に特化した電子カルテサービス
自由診療に特化した電子カルテのため、役務管理機能、ビフォーアフターや経過観察で撮影した画像を管理する画像管理機能などが備わっています。
他にも、紙ベースの書類をスキャンして保存できる文書管理機能、予約・受付を一括して管理する機能、運営に役立つデータ分析などの診療所で必要な機能がMEDIBASE 1つで利用できます。
また、クラウド型の電子カルテのため、全国に分院展開しているクリニックでも医院間の情報共有が可能です。
月額39,800円から利用できる
MEDIBASEは、使用するパソコンやタブレット端末や使用する人数に制限なく、1医院当たり月額39,800円から利用可能です。また、クリニックの規模や診療スタイルに合わせた最適なプラン提案も行っています。
また、デモ演習から利用開始まで最短1ヵ月で導入が可能です。デモで実際に電子カルテの画面や機能を確認可能です。さらに、全てをオンラインで契約まで進められるサービスも行っています。
特許取得済みの直接編集機能で直感的に入力できる
MEDIBASEは、非常勤の医師やはじめてのスタッフでも直感的に入力・操作できる分かりやすい操作方法にこだわり開発されています。
一般的な電子カルテとは異なり、入力のたびに小さな画面が開かないので、最小の手数でのカルテ入力が可能です。この直接編集機能は、特許を取得しています。
紙カルテのように自由な書き込みも可能
電子カルテでは、紙カルテのようなカルテの自由度が若干劣りがちです。しかし、MEDIBASEは、自由な書き込みが可能な「WYSIWYG(ウィジウィグ)エディタ」を搭載し、紙カルテへ記入するような自由な書き込みが可能です。
文字の大きさや太さの変更、文字色や背景色の変更、シェーマの挿入など、それぞれのクリニックに合った自由な装飾ができます。紙カルテのような細かい記入もできるため、幅広いクリニックで活用できます。
役務管理から収入分析も可能
MEDIBASEでは、月間の契約数や解約、消化、抹消などに関する管理が簡単な「役務管理機能」が搭載されています。契約日別、診療コース別、患者別、担当者別など細かく分けて金額の確認も行えるため、スタッフ別の売上分析や診療コースの再構築などにも活用できます。
また、収入分析・患者数統計・診察報酬統計など、それぞれをグラフ化して可視化できるため、経営状況の把握が簡単です。分析データを基に運営の方針を検討するにも役立つ機能です。
まとめ
電子カルテ導入のメリットや導入費用、普及が進んでいるクラウド型電子カルテなどについて解説しました。電子カルテにはたくさんのメリットがあるため、導入後うまく活用することで、クリニック全体の業務を大きく効率化できるでしょう。
中でもクラウド型は、中小規模の病院や診療所、自由診療がメインのクリニックで導入しやすい電子カルテと言えます。電子カルテの導入検討をする際は、ぜひ一度MEDIBASEへご相談ください。