クリニック開業時に電子カルテは必要?料金相場や導入のメリット・選び方を紹介
クリニック開業時の電子カルテ導入率が高くなり、必須といえる状況になっています。現在クリニックの開業を目指していて、電子カルテの導入に悩んでいる方もいるかもしれません。「導入にはどれくらいのコストが必要なのか」「自分のクリニックに合った電子カルテはどれなのか」と電子カルテ選びには悩みどころが多いです。
そこでこの記事では、電子カルテの料金の相場や、クリニック向けの電子カルテを選ぶポイントなどを解説しています。
目次
クリニック開業時の電子カルテ導入は必須になってきている
4つの都道府県の新規開業クリニックを対象にした調査では、電子カルテの導入率は95%を占めているという調査結果があります。
その他の主要医療ICT機器と比較しても、電子カルテは圧倒的に高い導入率を示しています。このように、クリニック開業時の電子カルテ導入は必須ともいえる状況です。
これには、電子カルテの標準化の推進や、マイナンバーカードの保険証利用などが影響しています。
電子カルテの標準化が進んできている
近年、日本では急速な高齢化や疾病構造の変化により、地域完結型の医療が求められるようになっています。このような背景から、医療機関同士でのスムーズな情報共有、継続的な医療を患者さんに提供できるよう、電子カルテの標準化を目指しています。
電子カルテが標準化されれば、転院などで医療機関が変わっても、情報共有が容易です。重複した情報収集を防げ、より正確な問診を効率的に実施できるようになるのです。
このように、日本での電子カルテの標準化はますます進んでいくと予測されます。これから開業するのであれば、開業時に電子カルテを導入しておくと、途中で移行の手間をかけなくて済むでしょう。
マイナンバーカードの保険証利用が義務化される
マイナンバーカードの保険証利用が2021年10月から可能になりました。2023年4月からはカード利用に必要なシステム導入を、日本の全ての医療機関に義務化する方針です。これは、新規開業クリニックの電子カルテ導入を促進した要因になっていると考えられます。
さらに、マイナンバーの保険証利用に合わせて、オンラインで健康保険証の資格確認ができる「オンライン資格確認」の運用も進んでいます。
このシステムは電子カルテとの連携ができ、連携のための改修費用は国から補助を受けられます。
参考:オンライン資格確認の導入について(医療機関・薬局、システムベンダ向け)
クラウド型が増えたことにより、昔よりも安く導入が可能
かつて、電子カルテはオンプレミス型の電子カルテが主流でした。オンプレミス型はセキュリティーの高さや、診療科別のカスタマイズが可能などのメリットがあります。
しかし、データを保存するためのサーバーを購入して院内に設置する必要があり、高いコストがかかるため、大きな規模の医療施設でしか導入ができない状況がありました。
クラウド型の電子カルテが提供され始め、現在では様々な特徴を持ったクラウド型電子カルテが普及しています。オンプレミス型に比べ、低コストで電子カルテを導入できるので、新規開業クリニックでの導入率が高まっています。
クリニック向け電子カルテとは?
クリニックで電子カルテを導入する場合、自院の診療の特徴や電子カルテにかけられる経費を検討する必要があります。
総合病院などの大きな規模の医療施設に比べ、コストを抑えて導入する必要があるでしょう。
また、クリニックでは特化した診療科で医療を提供していることが多いため、診療の特徴にあった電子カルテが向いていると言えます。
クリニック向け電子カルテの料金相場
日本における電子カルテの普及率は、令和2年時点で400床以上の一般病院が91.2%になっています。一方で、一般診療所では49.9%と50%に届いていません。小さい規模の医療施設の電子カルテの普及率が低い原因の1つに、コストがあります。高いコストが電子カルテ導入の障壁となっており、導入を見送っているのです。
しかし、現在はクラウド型のように、クリニックでも導入できる料金設定の電子カルテも普及しています。ここからは電子カルテごとの料金相場を解説します。
オンプレミス型の場合
オンプレミス型は、院内にサーバーを設置して、カルテ情報のデータ管理や保存をします。そして、ローカルネットワークで院内のコンピューターを接続する、院内完結型の電子カルテです。
サーバーや専用のハードウェアを設置する必要があるので、初期費用には500万円程度必要と言われています。病院の規模によっては、使用するパソコンなどのハードウェアが増えるので、さらに費用がかさむ可能性もあります。
また、システムの更新時には初期費用と同等の料金が必要で、ランニングコストも高額になりがちです。
クラウド型の場合
クラウド型の電子カルテは、自院へのサーバー設置は不要です。インターネットを介してクラウド業者が管理するサーバーにカルテデータを保存・管理します。パソコン、インターネット、ブラウザがあれば、場所や端末を選ばず利用でき、オンプレミス型に比べて低コストです。このため、クラウド型はクリニック向けの電子カルテといえるでしょう。
初期費用は10万円程度のものが多く、月々の利用料金も数万円程度とリーズナブルです。また、オンプレミス型のようなシステム更新もないため、長期的に見ても安定した低価格で利用を続けられるシステムです。
診療科別に特化した電子カルテも存在する
最近では、さまざまなクラウド型の電子カルテのサービスが登場しています。例えば診療科ごとに特化した電子カルテも増えてきました。
例えば産科は、妊婦検診や妊娠歴の計算、出産予定計算、分娩記録など、他の診療科の記録とは、形式が全く異なる記録が必要になります。産婦人科専用の電子カルテでは、このような記録や妊娠経過を管理しやすいシステムを構築しています。
他にも歯科、精神科、眼科、在宅医療、美容外科などに特化した電子カルテがリリースされています。
クリニックは診療科に特化しているケースが多いので、診療科別に構築された電子カルテも選択肢の1つになるでしょう。
自由診療に特化した電子カルテは少ない
診療科目に特化したクリニックも多いですが、さらにその中でも自由診療に特化したクリニックもあります。
とくに、美容外科・美容皮膚科・歯科などで、自由診療のみを提供するクリニックも見かけます。
自由診療を扱うクリニックでは、複数回の施術コースを管理する役務管理や、経営管理、予約システムなどの機能が、業務の効率化や経営分析に重要な機能です。
以前より、自由診療に特化したクラウド型の電子カルテはなく、2018年に初めて自由診療に特化した電子カルテ「MEDI BASE」がリリースされています。
しかし、未だに自由診療に特化した電子カルテは少ないのが現状です。
クリニック開業時に電子カルテを導入するメリット
電子カルテを導入するとなると、高くなりがちなコストが気になるかもしれません。しかし、開業時に電子カルテを導入するのは、経営・業務効率・患者さんへのサービスの質の担保など、さまざまな場面でのメリットも多くあります。
目先のコストだけにこだわらず、自院の解決したい業務・経営上の課題を解決するために、導入を検討する価値があるでしょう。
ここからは、開業時に電子カルテを導入するメリットについて解説していきます。
カルテ記入の作業効率化ができる
カルテは1人の患者さんに対して1部しかありません。紙カルテの運用では、1人がカルテを使っていると、他のスタッフは記録や閲覧ができず非効率的です。
一方電子カルテは、ログインできるパソコンやタブレット端末があれば、複数人が同時に同じ患者さんの情報を閲覧し記録できます。リアルタイムに記録できるので、情報共有もスムーズになります。
また、電子カルテの場合は、情報の流用や転記が簡単に行えます。過去の記録や、検査データをアセスメントなどの記録で活用したい場合は、コピーして引用できるので作業効率がアップします。
患者さんへの説明も簡単になる
手書きの紙カルテでは、「字や絵が汚くて読めない」といった問題が生じがちです。カルテに記載している検査データやイラストが見づらく、患者さんへの説明に効果的に活用することが難しくなるでしょう。
一方電子カルテは、パソコンやタブレットで入力します。デジタルなので、字の読みづらさは解消されます。また、レントゲンやCTなどの画像データを電子カルテ上で患者さんと共有できるため、説明が簡単になります。
シェーマ機能を搭載しているものも多いので、絵での表記してよりわかりやすい説明を行えるでしょう。
書類・文書作成が容易になる
クリニックの院長は、医師でありながら経営者であり、抱える業務が多くなりがちです。
神奈川県保健医協会の調査の結果からは、書類・文書の作成は、クリニック院長の大きな負担になっていることが推察されます。
電子カルテには、診断書・紹介状などの、各種書類や文書のテンプレートが準備されています。システムによっては、自院の診療の特徴に合わせて独自のテンプレートを作成することも可能です。
電子カルテでは過去の記録の参照や、データの転記もスムーズに行えるので、書類や文書作成の時間を大幅に短縮できるでしょう。
参考:神奈川県保健医協会:開業医の 1/4 が過労死ライン 医科・歯科とも長時間労働
医療ミスの防止になる
手書きの紙カルテでは、医師の指示や記録が読み取りにくい場合があり、判読に時間がかかるという問題が生じます。そもそも判読しなければいけないような字で記載されている場合、看護師が医師の指示を見間違い、医療ミスにつながってしまう可能性もあるのです。
電子カルテはデジタルなので、誰が記載しても同じです。字が汚くて見にくいという問題は解消されます。
また、医師が入力した検査、処方、注射などの指示内容が表示される場所が決まっているので、指示の見落としによる医療ミスも予防できます。
事務作業・受付作業の効率化につながる
電子カルテには事務作業や受付作業が効率的になる機能が備わっています。
代表的なものは会計ソフトです。電子カルテが一体になっているもの、あるいはシステム連携ができるものがあります。電子カルテの情報を反映するので、会計処理がスムーズになるでしょう。事務作業の効率がアップするだけでなく、患者さんの待ち時間も短縮できます。
また、予約システムとの連携も可能です。予約システムを連携させると、患者さんがインターネット上で予約でき、電話による予約受付の対応業務が軽減することが期待できます。
ペーパーレスにより省スペース化につながる
診療録は5年の保管義務があり、それを順守するためにも、紙カルテの保管スペースが必要です。クリニックの開業当初は患者数が少ないため、あまり気にならないのですが、年数が経つごとに保管スペースの確保に頭を抱えるクリニックも少なくありません。
開業時から電子カルテにしておけば、ペーパーレスで運用でき、省スペース化につながります。同意書や説明書に、手書きのサインが必要な書類があるので、一部紙ベースの書類が残ってしまいます。ただし、電子カルテにスキャンできるので、ペーパーレスを目指すことも可能です。
顧客満足度の向上につながる
ある調査によると、外来患者さんの不満は「診察待ち時間」「会計の待ち時間」が上位に入っています。
電子カルテの多彩な機能で、これらの不満を軽減することが可能です。
電子カルテに搭載された、予約システム、会計システム、書類・文書のテンプレート、収入分析などの機能をフル活用することで、事務作業、受付業務、記録などさまざまな場面で業務を効率化できます。業務を効率化できることにより、患者さんへの直接的なサービスの質向上や、患者さんの待ち時間の短縮につながり、患者さんの顧客満足度向上を目指せるでしょう。
クリニック向け電子カルテの選び方
クリニックは無床、もしくは19床以下のものとなっています。
規模が大きいわけではないので、自院の規模に合った電子カルテを選択することが大切です。便利そうだというだけの理由で、電子カルテの機能をつけすぎると、使いこなせないままになる可能性もあります。
必要な機能を吟味し、自院の経営に悪影響にならないコストを見積もって、ベストなシステムを選びましょう。
オンプレミス型かクラウド型で選ぶ
オンプレミス型はソフトをインストールして使用するため、動作がスムーズです。また、院内のハードウェアに情報を保存しているので、画面切り替え時も反応が速いという特徴があります。また、搭載されている操作メニューが充実しており、より個別性の高い機能をカスタマイズできます。
クラウド型は、アップデートやトラブル修正、バックアップといった作業を全てクラウド業者が行ってくれる点が大きなメリットです。また、インターネット環境さえあれば、場所を選ばずにカルテにアクセスできます。在宅医療や訪問医療などでも、現場でカルテを開けます。
それぞれに特徴があるので、自院で運用したいスタイルに合わせて、選択すると良いでしょう。
入力のしやすさで選ぶ
電子カルテの入力画面も、メーカーによってさまざまです。
クリニック開業にあたって、雇用したスタッフが電子カルテの操作に慣れているとは限りません。このため、入力しやすいシステムを選ぶことをおすすめします。そうすることで、電子カルテの運用を少しでも早くスムーズにできるでしょう。
現在、スマートフォンの普及により、日常的にパソコンを利用しない人は全ての年代で一定数います。
パソコン操作に慣れていない人が使用しやすいような、入力機能を持ったものを選ぶと良いでしょう。
費用で選ぶ
クリニックの開業時には、できるだけコストを抑えたいという気持ちがあると思います。電子カルテは、必要な経費の中でも高額なものになるでしょう。
このため、クリニックの開業・事業計画に沿って、電子カルテにかけられる費用を明確にしておきましょう。
とは言え、コストを安くすることを重視するあまり、必要な機能を削除したり、自院の診療に合わない電子カルテのシステムを選んだりしないように、気を付ける必要があります。
電子カルテを導入する場合、IT導入補助金など、補助金を申請することも可能です。使える補助金を調べ、上手に活用すると良いでしょう。
診察スタイルに対応できるかで選ぶ
クリニックを開業するにあたって、経営理念や経営方針を決めていると思います。その中で、クリニックの診療スタイルもイメージされているかもしれません。
電子カルテは自分の思い描いた診療・医療を、患者さんに提供するためにも、役割を果たしてくれます。
例えば、「インフォームドコンセントを重視した診療を行う」といった診療スタイルがあるとしましょう。電子カルテの画面を見せながら説明を行うことで、患者さんが理解しやすくなるといった効果を期待できます。このように、自分の考える診療スタイルには、どのような機能があると良いかという視点で選ぶこともおすすめです。
自由診療のクリニック向け電子カルテならMEDIBASEへ
MEDI BASEは自由診療に特化したクラウド型の電子カルテで、自由診療を扱うクリニックでの導入におすすめのシステムです。
自由診療特有の役務管理ができる機能を搭載しています。消化状況や預かり金の管理まで、簡単に確認ができ役務管理の負担を軽減できます。
気になるコストですが、利用人数、使用するパソコンの台数は無制限で、月額の利用料金39,800円からです。
導入はお申し込みから数日~1カ月程度で利用開始ができます。開業に合わせて電子カルテ導入をご検討の場合は、ぜひご相談ください。クリニックに合ったプランをご提案いたします。
まとめ
クリニックを開業する際には、開業地の決定・人材確保・資金集めなど、さまざまなことを計画的に進めていかなければなりません。
どの段階にあっても、クリニックを開業する思いや熱意を持ちながら、一貫性を持って事業を進めることが大切です。
電子カルテは、院長の「こんなクリニックにしたい」「患者さんにこんな医療を提供したい」という想いの実現の手助けになるツールです。
電子カルテの機能を活用することで、業務効率をアップし、患者さんの満足度も高める効果を期待できます。
導入コストが気がかりになりがちですが、それだけの価値があることを念頭に、ぜひ導入を検討してください。